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1・最後の『カノジョ』
先週末に文化祭を終えた、九月最後の月曜日。
放課後を迎えてすぐの、我が吉野木中学校三年E組の教室は、一日の授業が終わった解放感から、いつも通りうるさい。
「ねぇ、沙織ちゃん」
後ろの席に座る親友・松樹奈々夏が、私の背中を指でつついてきた。
教卓前という嬉しくない特等席から私がふり返れば、奈々夏は控え目に教室の後ろをうかがいながら、小声で言う。
「見て見て! これから北宮くんの新しいカノジョを決めるみたいだよ!」
「あ、もう三ヶ月たったんだ?」
私も小声で返事をしながら、北宮旭くんの机がある、窓際一番後ろの席へさりげなく視線をやる。
そこには学校一のイケメンといわれている彼が、スクールカースト上位の女の子たち五〜六人に取り囲まれている光景があり……うへぇ、という気持ちで私は目を細める。
北宮くんは受験のためにもう引退してしまったとはいえ、水泳部元エース。
彼は水泳以外のスポーツも得意で、勉強もできる。
同じクラスということしか接点がない私ですら、彼が誰に対しても、気さくに接する人だということを知っている。
顔もスタイルも良くて文武両道! 性格も良し!
そんなパーフェクトマンだから、彼の恋人になりたい女の子たちは、当たり前にたくさんいて。
でも彼は一人しかいないから、彼のことが好きな女の子たちは話しあい、どうしたらいいかを考えた。
そして彼女らが出した結論は、『北宮くんは三ヶ月ごとに恋人を選び直して欲しい』……だった。
どういうことかと言うと、北宮くんとつきあっても、三ヶ月たったら別れなくてはいけない。
三ヶ月の期限が切れ次第、即別の子が彼の新恋人になるが、その新しいカノジョも三ヶ月後には別れなくてはいけない――というシステムを、彼に提案したらしい。
このことを知った時私は、「それでいいの?」と盛大に首をかしげた。
しかし私がどんなに疑問に思おうが、このシステムは問題なく稼働しているらしいので、北宮くんも彼女たちもそれでいいのだろう。たぶん。
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