Ep.01『本の中だけでよかった』

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「なんか面白そう、勉強会終わったら一緒に行こ」 いつの間にか両手にジュースを持った前田さんが俺の隣に座っていた。オカルトじみた不思議な書類を、少し胸を躍らせながら見ているようだった。 それにしても、俺のすぐ隣に…… 「行くってどこに……?」 「その病院に決まってるでしょ。早く勉強終わらせて電車乗って行こ」 「いや、だけど、勝手に行ったらまずいんじゃ……」 「行きたいんじゃないの? オカルト、興味あるんじゃないの?」 「それはそうだけど、俺、もっと……」 「気づいたんだったら動かないと オカルトのままでいいの?」 一瞬、前田さんが昔の自分のように見えた。あの頃の俺はどこに行ったのだろう? 色んなことに気づき、すぐに行動していた俺は…… セミの音がなる中、3時間ほどで勉強会は終わった。 「で、どうする? 行く?」 俺の返事は決まっていた。 電車に揺られ、2つ市を(また)いだ先。 壁や天井に蔦が巻きついた、奇妙な病院へと足を踏み入れた。
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