5人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は言葉を失っていた。一緒に過ごしてからもう1週間だと言うのに何も知らなかった。
「兄ちゃん、どうしたの? 兄ちゃん、にぃちゃんっ!!」
何度か言われてやっと気がついた。それほどまでに時間が止まったような感覚に陥っていた。
「あぁ、ごめん……」
「あっ、もしかしてこれのこと? いいんだよ、かっこいいでしょ?」
いつも通りの満面の笑みでこちらを見てきた。
「これねっ刺されたの、お母さんに」
絶句した。
「お母さんのこと怒らせちゃったの。でも当たりどころが悪かったみたい、いつものことだよ」
「普通じゃないだろ……。今までどうやって生きてきたんだよ」
「お母さんと一緒にだよ。僕は一人で生きていけないから」
「嘘だろ……。なんで助けを求めな/」
「だからさ、だから……」
「兄ちゃんのとこに来れてよかった。今が一番楽しいよっ」
いつもよりも明るい笑顔だった。
俺はとっさに体が動き、政己のことをハグした。
今日から政己は俺の弟になった。
最初のコメントを投稿しよう!