Ep.00『唯一人の弟』

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俺は言葉を失っていた。一緒に過ごしてからもう1週間だと言うのに何も知らなかった。 「兄ちゃん、どうしたの? 兄ちゃん、にぃちゃんっ!!」 何度か言われてやっと気がついた。それほどまでに時間が止まったような感覚に陥っていた。 「あぁ、ごめん……」 「あっ、もしかしてこれ(右目)のこと? いいんだよ、かっこいいでしょ?」 いつも通りの満面の笑みでこちらを見て(・・)きた。 「これねっ刺されたの、お母さんに」         絶句した。 「お母さんのこと怒らせちゃったの。でも当たりどころが悪かったみたい、いつものことだよ」 「普通じゃないだろ……。今までどうやって生きてきたんだよ」 「お母さんと一緒にだよ。僕は一人で生きていけないから」 「嘘だろ……。なんで助けを求めな/」 「だからさ、だから……」 「兄ちゃんのとこに来れてよかった。今が一番楽しいよっ」 いつもよりも明るい笑顔だった。 俺はとっさに体が動き、政己のことをハグした。 今日から政己は俺の弟になった。
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