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俺は棚から勢いよく教科書やワーク、その他諸々を引っ張り出し無造作にカバンの中へと押し込めた。
急いで朝食を準備しようとした時、机の上に2切れのトーストと綺麗に磨かれた眼帯が置かれてることに気づいた。
きっと兄ちゃんが用意してくれたんだろう。
その場で深く一礼して、眼帯を付けつつパン2切れを咥えながら風の如く四畳半を飛び出した。
高校到着後、目を疑った。校門がぴっしりと閉まっていることに。そして気づいた。
「今夏休みじゃん!」
じゃん、じゃん、じゃん……
街全体に俺の声が谺した。
おいおい嘘だろ、完全にミスった。
漫画みたいな展開に自分でもびっくりしているけど、なにより部屋で本を読みながらゴロゴロできる一日を失ったことに絶望した。
「これからどうしよ……」
「どうしたの?」
突然左隣から女の子の声が聞こえてきた。聞き覚えのある声で、とても柔らかく優しい声で……。
そこには前田さんが立っていた。
「久しぶり、政己くん。」
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