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「終業式ぶりね、元気だった?」
「あっ えっと うん」
前田さんは同じ高校の同級生で、2年連続で同じクラスだった。
かなりミステリアスであまり考えや感情を表に出さないタイプだけど、俺とオカルトの話をしていた時だけはほんの少し笑ってくれた。
そんな前田さんの笑顔が、俺は1番好きだった。
「学校のカバン……もしかして間違えて学校来たの?」
「そんなバカな……はい、そうです」
「嘘でしょ、普通間違える? しかもこの時間なら遅刻してるし」
まったくもってその通りだ。9時半は普通に一限逃している。
前田さんが少し間を空けてから口を開いた。
「あのさ、一つ提案なんだけど……」
「……なに?」
「せっかく授業の準備してきたんだしさ、私の家で勉強会しない?」
え?
前田さんの家で勉強会?
え?
今までの忙しさが嘘のように消え、時間がピタリと止まった気がした。
ドクン、ドクン、ドクドクッ!
止まった時間は俺の鼓動とともに、いきなり素早く動き始めた。
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