下の人

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 目覚ましが鳴った。もう朝なのか。体が重たい。ここに入居してから殆ど熟睡できていない。それもこれも下の住人のせいだ。  しかし仕事に行かなければならない。入社したばかりなのでそうは休めない。居眠りなんてしたら最悪だ。何とか気合を入れようと眠い目をこすりながらベランダに出た。 「うわっ、いい天気」  太陽が眩しい。そして何より見晴らしがいい。アパートの周りは田んぼ、その向こうには青々と葉を茂らせた果樹園が見える。何の果物なのだろう。今度近くまで行ってみよう。  少し気分が良くなった。私は洗濯機に衣類を放り込んだ。良く乾きそうなお天気だ。  ふと、下にはどんな人が住んでいるのだろうと気になった。手すりから身を乗り出し下の階を覗いた。  下の階のベランダにはゴミ袋が積まれていた。生臭いような臭いが漂っていたので農家の堆肥の臭いだろうと思っていたが、どうやらゴミの臭いだったらしい。一気に気分が下がった。朝から嫌な物を見てしまった。  朝の爽やかな空気を部屋に入れようと思ったが私はサッシを閉め朝食を食べた。洗濯物も臭いが付きそうなので部屋の中に干した。納得のいかない気分で私は仕事へでかけた。
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