下の人

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「イヤーー! ヤメテーー!」  女の悲鳴で目が覚めた。まだ真っ暗だ。枕元に置いてあるスマホを確認すると夜中の2時だった。まただ。毎晩このくらいの時間になると下が騒がしくなる。  大学を卒業し就職を期に念願のひとり暮らしを始めた。このアパートに引っ越してきて1週間経つ。口うるさい親から解放され静かに生活できると楽しみにしていたのに。部屋の見学を昼間にしたので夜の様子なんて分からなかった。失敗した。  築10年でまだそんなに古くはない。ワンルームで手狭だがロフトが付いている。バス・トイレは別。それなのに家賃は格安だ。交通の便がかなり悪く、近くに店もないからだと説明を受けた。でも車があるので困らない。逆に田んぼに囲まれ静かな所が気に入った。夜は虫の音を聞きながら眠れると期待して入居したのにがっかりだ。 「イタイ! イヤーー!」 「うるさい! 黙れ!」  ケンカするのは仕方ないがどうやら暴力も振るっているようだ。時折壁に物が当たったような音も聞こえる。もし重大な事件か起こったらと思うと怖くて眠れない。  そうは言っても明日も仕事だ。私は布団を頭まで被って目を閉じた。幸いその後は静かになった。でも変に緊張してしまい中々寝付けなかった。
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