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罰ゲームなんだと、彼の友人は笑っていた。
放課後、彼の肩を叩きながら。
カラオケの点数が一番悪かったとか、ゲーセンで狙ったぬいぐるみが取れなかったとか。
それだけじゃつまんないだろ?
だから罰ゲーム。
せいぜい頑張って。
からかうような励ましの声。
まさか自分に関係するとは思うわけないよ。
一年に引き続き、二年も同じクラスになった。
いつもクラスの真ん中の後ろで仲間とギャーギャー騒いでるような奴。
割と進学校だから、ピアス開けたり、派手な毛染めはしてないけれど校則ギリギリに髪の毛を伸ばして制服を少し着崩していて、校内での使用禁止のスマホを昼休み堂々と開けては他校の友人とやりとりしてるような奴。
女子にも男子にも優しくてかっこいい。
それがあいつ。
飯倉朝陽。
対して俺は大体教室の窓際の一番前でぼんやり校庭を眺めているような、来年卒業する時に「え?延岡充琉、いたっけ?」なんて卒業アルバムを見ながら言われるタイプ。
メガネと重い前髪がチャームポイント。自分で言うのもなんだけどさ。ただの自虐ネタだから。
別に目立ちたいと思わないし、そこそこの成績を収め、出来れば推薦でそこそこの大学に行ければ良いと思っているタイプ。
でもアサヒのまぶしさに少し、目を細めてしまう、俺。
高校で科学部に入部したのはテレビで子ども向けの実験を見たから。
実験は子ども向けだけど、内容は十分大人向け。
スライムが何で固まるのかとか、空気鉄砲の威力の解説とか。
顧問と数人の部員で週に三回ほどわいわいと実験をしている。
毎回成功する訳じゃないけど失敗もまた楽しいし。
文化祭では教室を借りて「実験コーナー」を開催していて、近所の子ども達には評判が高い。
だから部活動の中心活動は子供にも興味を持って貰えるでも決して子供だましじゃない化学実験。
それはなかなか高度で楽しかった。
それに、しばらくしてから気づいたんだけど科学部の部室兼科学教室は第二グランドがよく見えて、そこで部活にいそしむ飯倉の姿を見る事が出来た。
ハンドボール部の飯倉はやっぱりそこでも人気者だし実力もあるみたいで、いつも戦略の中心にいるようだった。
俺は部活がない日も勉強をする名目で顧問に鍵を借り、この教室にいた。
ただ、飯倉を見ているだけで良かったんだ。
ある日、科学室を出るのが遅くなってしまった。
顧問の論文の実験に少し付き合わされたのだ。
高校教師だけど、科学者になる夢が捨てられずに科学誌に論文をたまに送るんだと顧問は少し恥ずかしげに言っていたけど、俺はそれはそれですごいと思う。
一斉下校の鐘がなる。
運動部組ももうほとんど片付けが終わってグランドには人影は少なかった。
せっかく科学室にいたのに今日は飯倉が見れなかったなあとちょっと肩を落として帰宅の途に付けば、下駄箱のある昇降口に誰か立っているのが見えた。
あと10分もすれば警備員の見回りが始まる。
早くしないと叱られるなあと思いその影の脇をすり抜けようとしたら腕を掴まれた。
「延岡」
「ん?飯倉?」
気を遣ったような優しい掴み方に痛くは無かったけれど、驚く。
「…一緒に帰らない?駅まで」
緊張したような面持ちで飯倉は俺に言った。
「え?あ、いいけど…」
いつもは仲のいいハンドボール部のメンバー兼クラスメイトとツルんでいる飯倉が一人でいるのは珍しい。
しかも、俺の名前を知っていたなんて驚く。
誘われたのも驚くけど。
見るだけだった存在に誘われて驚いて、俺は返事に困り変な返しをする。
「JR?地下鉄?」
都内にある私立高校は立地が良くて、色々な路線から通うことが出来る。
俺は地下鉄だけど、飯倉はどっちなんだろう?朝会ったりしないからJRかな?まあどちらの駅もそうは離れてはいないからなあ。
「どっちでもいい」
思わぬ返事に俺は思わず顔を見上げた。
「え?定期券持ってないの?」
「あ、いや…よかったら飯でもって」
緊張からなんか、照れてる感じの顔色に変わる飯倉。
なんだろ。
「延岡は地下鉄だよな?地下鉄駅そばのファミレス、いかね?」
「あ、あ、いいよ」
まだ掴まれている腕にチラリと視線を落とすと飯倉は、あ、ごめん、と慌てて手を離してくれた。
靴に履き替えて俺達はファミレスへと向かった。
特に会話も無く、俺は飯倉の少し後ろをついて歩いた。
教室で騒いでいるときは少し丸まった背中も部活中はしゃんと伸びるところが好き。
思えば一年の頃、そのギャップが目にとまって意識して飯倉を見るようになってそれから五月雨式に好きになっていったんだ。
休み時間は五月蠅いけど授業中は案外熱心に授業を受けているところ、教室移動で先生の重い教材を持っている日直女生徒の荷物を代わりに持っているところ。
一つ目に付けば、好きになって、また見るから好きなところが増える。
だらだらと降りしきる梅雨時期の雨のように、静かに俺は飯倉が好きになっていった。
でも飯倉を好きな奴は沢山いる。
俺の実らない恋心なんてひっそりしまっておけばいい。
母親に夕飯いらないメッセージを送って、俺はファミレスでパスタを注文した。
飯倉はハンバーグセットを食べている。
そえもののパセリも食べた姿を見て、その好き嫌いしない姿がまた好きになった。
「俺と、付き合わない?」
ドリンクバーで二杯目のコーラをおかわりして飲み干した後、まっすぐに俺を見て飯倉は言った。
「は?」
付き合う。
付き合うって、この飯食っている状況とかじゃないよな。
脳まで言葉が伝わると俺の心臓はどくんと大きく跳ねた。
「あ、延岡、彼女とか、彼氏とかいる?」
いるから黙ったと思ってるのか、「は?」の口のまま固まった俺に飯倉は焦ったように少し身を乗り出す。
「いや、いないけど」
俺は慌てて首を振った。
「良かった。あ、いや、でも俺を選ぶとは限らないか?」
ブツブツと椅子に深く腰掛け直したりしてソワソワと落ち着かない態度。
「付き合うって、えっと」
二人で出かけたり、その、好きあってたらキスとかその先とかしちゃうアレだよね?
「…二人で出かけたり…、とか」
うん。
飯倉も言い淀んだけど俺と同じ事を考えているのは間違いないみたい。
「だよね」
うーんと俺は考える。
正直嬉しい。
だって俺は飯倉が好きだから。
けど飯倉が俺を好きな理由が思いうかばない。
なんだろうと目を泳がせ、ふと、窓を見ると店内が映っていて俺たちから離れた座席に飯倉と仲の良いクラスメイト二人がちらちらこちらを見ているのに気づいた。
にやにや笑っては何だか囁きあってる。
もしかして。
俺は納得した。
罰ゲームか。
数日前、の、あの会話。
中身は男に告れとか、地味な奴に告れとかという事だったのか。
なるほど。
まさかターゲットにされるとは思わなかったけど。
事前に知っててよかった。
じゃなきゃ本気にする所だった。
俺は小さく息を吐いた。
一度は飛び跳ねた心臓が落ち着く。
ああ。
だったら俺は飯倉の役に立とう。
せっかくだし。
ええっと、どういう返事をすれば飯倉の勝ちなのかな。
俺を落とせばいいのかな。
でも告ればいいのなら俺がうんと言ったら困るのかもしれないが、俺も少しは夢がみたい。
うんと言ったところで飯倉がアクション起こさなければ別に何も始まらないだろう。
俺からどうこうなんて出来るわけないんだから。
「…いいよ。俺でよければ」
「あ、マジで?」
飯倉の顔がぱあっと明るくなって小さくガッツポーズを作る。
ちらりと窓を見ると飯倉の仲間がゲラゲラ笑っている。
答えが合っていた事が分かる。
罰ゲーム、成功かな。
良かった。
役に立って。
俺は皿に残っていたベーコンを一切れ口に運んで、ごちそうさまと小さく呟いた。
五月雨式にだらだらと好きになっていった恋心は残念ながらこんなことじゃ断ち切れそうにない。
どうしようかと俺は心の中で五月雨の様な涙を降らせた。
帰り際にメッセージアプリのIDをねだられる。
え?それ必要?
って思ったけど、俺を落とした証拠がいるのかな、と交換に応じた。
…罰ゲームだと思っていたけどもしかしたら掛けなのかな。
俺のIDゲットしたら1000円とか、手を繋いだら1000円とか…
そんな事を考えながらぼんやりとスマホを差し出す。
飯倉はすすっとスマホを操作して、ありがとうと俺に返した。
手に戻った瞬間メッセージ到着のアラートがポップアップする。
『ありがとう』
『よろしく』
良く知らないウサギのキャラクターのスタンプが送られてきた。
「あ、うん」
既読だけ付けると俺はスマホをポケットにしまう。
え?と飯倉が少し焦ったように俺に手を伸ばしかけるけれど、俺のどこを掴むわけでも無く遠慮がちに手を引いてしまった。
「既読無視?」
スマホをしまったポケットをじっと見て俺に訊く。
「……目の前にいるし、繋がったかどうかの確認だろ?」
「あ、まあ、そうだけど」
ぽりぽりと頬を掻いて目が泳ぐ飯倉。
あ。
俺は理解する。
証拠として返事がいるのか。
「あ、ごめん」
俺は慌ててスマホを取り出しタップして『よろしく』とメッセージを送った。
「なんで謝るの?」
「え?いや、気が利かなかったなあと思って」
「そうだよ!彼氏にもう少し優しくしてくれよ。驚いたわ」
そういうと今度は遠慮も無く俺に手を伸ばしてくしゅっと頭を一撫でした。
「わ!」
その瞬間俺の心臓はきゅんと跳びはね、頬は真っ赤に染まった。
「な、何?」
「スキンシップ。……だめ?」
はは、っと飯倉は目を細めて笑う。
少し首をかしげて、いいでしょ?という表情をしている。
……よく教室で女子にもやってるもんな。
陽キャ、自然にこんなことできるの尊敬する。
……罰ゲームの相手に。
「慣れて、ないから、ちょっとびびった」
火照った顔にちょっと手で仰いで風を送りながら俺は少し俯いた。
「えと、帰るよ」
「あ、そうだね」
俺はさっさと歩き出した。
ファミレスから駅まで50m。
並んで歩き始めて特に会話らしい会話はないけれど、さっきから気のせいか、たまに飯倉と手が当たる。
もしかして手を繋ぎたいのかもと思ったけれど、俺は気づかないふりをした。
「……飯倉はJR?」
「いや、チャリ」
「へ?」
「うち、結構近いんだよね」
「そっか」
地下鉄使って学校から家まで一時間はかかるところに住んでいる身としては都会に住んでいるときいて少し羨ましく思った。
駅の入り口の階段で別れる。
「……もしかして、チャリ、学校?」
「ああ、取りに戻るよ」
「ごめん。なんか遠回りになって」
「何言ってんの、俺が誘ったんだし」
飯倉が照れたように笑う。
気づけば飯倉の友達はいなかった。
もしかしたら、これから学校に戻って結果発表なのかもな。
「じゃ」
俺は軽く頭を下げると階段を降りた。
ホームに着く前にまたスマホが揺れて、見たら飯倉から『気をつけて』とスタンプが来ていた。
今度こそ俺は既読無視した。
これ以上からかいのネタが増えても仕方ないから。
明くる日。
朝から飯倉の『おはよう』スタンプの着信で起こされた。
いや、俺より学校近いのに起きるのはやくない?なんで?と思ったら、ハンドボール部の朝練があるらしい。
スタンプの次にそんな事が書いてあるメッセージが届く。
放課後の部活動はわかっていたけど、そうか、運動部は朝もやるんだな、と感心した。
それより、『罰ゲームの恋人ごっこ』がまだ続いている事に驚いた。
てっきり昨日あれから友人に結果を言って罰ゲームは終了したと思っていた。
言えてないのか。
じゃあ、もう今日までかな。
学校についたらいつも通りだろう……と思っていたのに。
ホームルームが始まる10分前に、要はいつも通りに、学校の昇降口に着いた俺は、下駄箱の側面に背中を預けて立っている飯倉に声を掛けられた。
「おはよう」
なんだか不機嫌。
「あ?あ、うん」
教室に向かって歩きながら飯倉は会話を続ける。
「また、既読無視?」
飯倉の声色は確実に怒っていた。
「え?」
「メッセージ送ったよね?」
強めの口調で確認される。
「あ、うん」
「普通さ、返事するよね?……付き合ってんだからさ」
……『お付き合い』続いてたのか。
なんで?
俺は返事に困った。
「あ、えと、寝ぼけてチェックしたから、えと」
「凹むからさ、スタンプだけでもくれよ」
「あ、うん」
凹む?
俺が返事しないくらいで?この陽キャのモテ男が何を言ってんだろう。
頭の中でぐるぐると思いあぐねていると飯倉が唐突に話題を変えた。
「延岡、弁当だよな?」
「うん」
「昼、一緒に食おうぜ」
「え?」
「何?なんか問題ある?」
……無いと思ってるのか?
「いや、えっと、昼休みは実験の仕込みをする当番で」
「実験?」
「そう。科学部の。昼休みに仕込んで、放課後に結果を見るんだ」
「そうか。……俺たちの朝練みたいなもんだよな。仕方ないか」
俺はホッと胸をなで下ろした。
もしかしたら飯倉の罰ゲームだか掛け事だかの友達に俺との仲を見せてポイントアップだったのかもしれないけれど、さすがに一緒に弁当を食うなんてそんなハードルの高いことは出来ない。
飯岡はいつもクラスの男女数人とわいわい食べているのを知っている。
俺は教室の隅で一人で食べるか、部活の実験の仕込みがあるときは科学室で食べることも多い。
そんな俺が飯倉と一緒に食べたらクラスのやつらになんて言われるか……
掛けている友人に『証明』できないのは仕方ないかもだけど、それはもうSNSのやりとりで勘弁して欲しい。
やり取れてないけどさ。
「じゃ、帰りは一緒に帰ろうな」
教室に着いて入る間際、またぽんぽんと頭を撫でられて、『な?』と笑顔で念を押されても俺は曖昧に笑うだけだった。
授業中も俺は上の空で昨日からの出来事を頭の中でおさらいしていた。
よくよく考えて見ると飯倉から『付き合って』と言われてまだ半日しか経っていないのに飯倉はすっかり俺の彼氏気取りなんだけど。
『付き合う』ってそういうものなんだろうか。
そもそも、飯倉は俺のどこが好きという設定なのか……
ん?
俺はハタと気づいた。
夕べファミレスで『付き合って』とは言われたけれど、『好き』とは言われてないことに。
そうか、そうだよな。
だって『好き』なんて言って俺に『どこが?』なんて訊かれたら返事に困るもんな。
罰ゲームはあくまでもクラスで目立たない地味で冴えない俺に告って落とすことなんだから。
ポキリ。
持っていたシャーペンに力が入り芯が折れる。
いつ種明かしをされてもいいように、過度な期待はしないでおこう。
科学室の窓から見ている距離が一番いいんだ。
カチカチとシャーペンをノックして新しい芯を出す。
こんな風に簡単に気持ちも出せたらいいのに。
放課後、部活動中。
気のせいかも、だが。
俺は化学室の窓からいつもみたいにハンドボール部…というか飯倉をチラ見していたんだが、何となく目があう…気がした。
ここから見ていたの、気づかれていたのか、な。
俺はそっとカーテンを半分閉めた。
「何してんの」
同じ二年のやつが、カーテンを閉めた俺に声を掛ける。
「あ、いや、ちょっと眩しくて」
「せっかくだから、全部閉めちゃえば?そうしたら手元見やすくなるし」
「あ、ああ」
言われて俺は全部閉める。
確かに飯倉の視線に耐えられそうにない。
実は授業終わりのショートホームルームが終わったタイミングで俺は同じ部活の奴がたまたま迎えに来てくれて、どさくさに紛れて飯倉と帰りの約束はせずに教室を出てしまった。
あっちはいつも通りクラスの男子や女子に囲まれていたから。
だから、一緒に帰ろうなんて言われたけどあんなのは罰ゲームの結果を見せつけるだけのものだろうって思ってさ。
SNSにメッセージが来てるのも知ってはいたけれど、既読にしなければ大丈夫だと思って。
だって、「既読無視」は凹むらしいから「既読」を付けなければいいかと思ったんだよ。
でも。
「もしかして、置いて帰ろうとしてる?」
「へ?」
下駄箱に不機嫌そうにもたれている飯倉がいた。
「……既読付かないから、さ」
「あ、えと、そうだった?」
ははは、と軽い笑いを浮かべて俺は靴に履き替える。
「部活中はスマホ見ないんだよ。一応校内ではスマホ使用禁止だから。顧問いるし」
「……俺が見ているのに気づいてカーテンは閉めたくせに?」
「あ、あれは結果がよく見えなくて」
「ふん」
拗ねたように飯倉は唇を尖らせた。
「…なあ、延岡?」
飯倉は俺の手首を掴むと自分の身体に引き寄せた。
は?
ちょ、ちょっとまって。
こんなまだ下校していない奴がいる時間に、何やってんだよ!
ぎゅっと抱きしめられると、耳元で囁かれる。
「本当に、マジで凹むから…」
離れるときに俺の頬を飯倉の唇がかすめる。
へ?
は?
キ、キスされた?
その後くしゃっと頭を撫でられる。
俺の心臓はバクバク言っていて、多分頬は真っ赤だろう。
思わず、キスされた場所を押さえてしまった。
けど。
その時、飯倉の視線がちらりと奥の下駄箱に向けられた。
俺も目線だけそちらに動かすと、誰かがいるような影が見えた。
あ。
そっか。
そうだよね。
罰ゲームだか、賭け事だか、まだ続いているんだった。
気づけばスンと気持ちが冷める。
俺だけ浮かれていてバカみたいだ。
「あ、えっと、昨日夕飯家で食べなかったから、今日はちゃんと帰れって言われてて…」
これは半分本当だ。
正確には夕飯がいらないなら授業が終わった時点で連絡するように言われている。
そうしたら俺の夕飯は母親が作らないから、友人とファミレスでもなんでも行って良いというのが延岡家のルールだ。
昨日はいきなりだったから「ちゃんとルール守りなさいよね」と今日の弁当に昨日の夕飯のほとんどをいれられたし、今日はなのでもうタイムアウトだった。
「え?マジ?…家の人に叱られた?」
なんだかちょっと焦る飯倉。
え?
心配してくれたの?
「いや、叱られてはいないから」
だって昨日は飯倉に誘われて嬉しかったし。
「あー、じゃあ、今日はファミレスやめとこう。…駅まで送るよ」
「いや、いいよ、そんな。方向違うんだろ?」
「大丈夫。今日はチャリ押してくから」
門のところで待ってて、と、飯倉は自転車を取りに行った。
このままそっと帰ることも出来るが、でも俺はやっぱり飯倉が好きなのでこのチャンスは逃せないと思って門まで移動する。
俺は飯倉好きなんだよなあ。
飯倉は違うんだけど。
校門にもたれて俺はそっとため息をついた。
それからも毎日、朝は飯倉のメッセージの着信音で起こされ、昼部活の当番が無いときは一緒に飯を食べ、放課後は駅まで一緒に帰るという「え?なにこれ、俺たち付き合ってんの?」という状態が続いた。
クラスの皆もこの状況にざわついた。
俺が飯倉達陽キャメンバーに入るわけじゃ無く、飯倉が一人の俺のそばに寄ってくるからだ。
中には本当に心配してくれて「なんか嫌がらせでもされてるのか?」と訊いてきた奴もいる。
いや、飯倉そんなやつじゃないだろ、と俺は苦笑と共に否定した。
まあ、嫌がらせと言えば嫌がらせかも、だが。
むしろ、俺の存在が、飯倉にとって。
クラスで飯を一緒に飯を食ってると飯倉の仲間がニヤニヤと笑って俺たちを見てはひそひそと何か声を潜めて話をしている。
たまに親指と人差し指で輪を作って振るジェスチャーをしてるから、きっと掛け金の話だろう。
いつまでこの茶番を続ければいいのか。
飯倉の罰ゲームはいつ終わるんだろう。
いつまで掛け続けるんだろう。
「でさ、今度月曜日、映画見にいかない?」
卵焼きを口に運びながらぼんやりとこのゲームの終わりを考えていた俺に、飯倉がニコニコと話しかける。
この学校は文武両道を掲げているからか、基本的に月曜日は部活が休みだ。
なので俺たちは普通の日は一緒に駅まで帰る位で(部活が無いときも俺は大体化学室にいるし)月曜日にファミレスに行ったりしていた。
とは言ってもまだ二回。
これで三回目の月曜日だ。
「映画?」
「そうそう、週末から見たい映画が始まるんだ。延岡と一緒に見たいなあと思って」
「えと、何?」
聞くと特撮絡みの人気のキャラクターが出る映画で俺も少し興味があったやつだった。
「いいよ。行こう」
「やった」
本当に嬉しそうに飯倉は笑う。
騙されそうになるくらいの笑顔で。
でもその笑顔はいつだって俺以外にも向けられてるものだ。
「じゃあ、まずはマックに行ってから…」
飯倉が月曜日のプランを話してくれるけどあまり頭には入って来なかった。
だってやっぱり飯倉の友人がニヤニヤ笑って見ていたから。
土日は科学部はないけどハンドボールは部活がある。
俺は学校に行かずに家で勉強してるかゲームしてるか、なんだけど、飯倉はものすごくマメに俺にメッセージを送ってくる。
『おはよう』
『何してる』
『練習うぜー』
練習中にスマホいじってて注意されないのかなあと心配になるくらい。
また既読無視するとなんか言われるから俺はとりあえず『うん』とか『頑張って』とか一言返すようにしていた。
すると、
『冷たい』
『もう少しマシな返事して』
とダメ出しが来る。
…陰キャにはハードル高いんだけどな。
でもこういうやり取りってなんか本当に付き合ってるみたいで楽しい。
俺は、
『無理~』
とバッテンを作ってるパンダのスタンプを送った。
速攻でしょんぼりしているウサギのスタンプが返って来た。
くすりと俺は笑ってそのままスマホを抱きしめた。
月曜日。
昼休みに珍しくハンドボール部のミーティングがあるからと飯倉は教室から出ていってしまった。
「一緒に弁当食えなくてごめんな」と俺の頭をくしゃりとひとなでして。
「あ、うん、大丈夫」
赤くなった顔を隠すように俯けばクラス中のやつらがヒュウとからかいの息を呑む。
爽やかな笑顔の残像を残して出ていったのを見送って俺は小さくため息をついた。
モソモソと弁当を食べれば「今日の日直だれ~」と声がかかる。
「あ、俺」
返事をすれば「現国の先生が資料取りに来てってさ」と言われた。
「わかった」
次の授業の準備に呼ばれたらしい。
弁当の残りをかきこんで、俺は立ち上がった。
職員室に行くついでに自販機で飲み物を買おうと近道に中庭を突っ切る事にした。
中庭にはベンチが点々と置いてあってそこで昼を食べてる奴もいる。
その一つ、植え込みを挟んで置いてあるベンチの脇を通ると俺と飯倉の名前が聞こえた。
向こうは俺が見えていないし、俺も声の主は見えない。
けど。
「本当にあいつもかわいそうに」
「あんなヤツに付きまとわれて」
「罰ゲームってもさ?」
「迷惑そうだもんな」
「キスしたら終わりだってさ」
飯倉の連れのクラスメイト二人だ。
いつもニヤニヤと俺と飯倉を見ている。
…俺の事、飯倉やっぱり迷惑なんだな。
というか別にいつ終わりにしてもいいんだけどな。
最初から俺の片思いで、罰ゲームに便乗してちょっとイイ思いさせて貰ってるだけだし。
聞かなかった事にして立ち去ろうとしたら、
「延岡?」
と、呼び止められた。
「あ」
飯倉がペットボトルを三本持って立っている。
こいつらの分のお使いかな?
また罰ゲームなのかよ。
きょとんと俺を見ているから俺がここにいる事は想定外だったんだろう。
「え?延岡?」
クラスメイトの焦った声がきこえる。
あ、俺が聞いていたことに気づかれたのか。
「…ば、罰ゲームな事知ってたから、大丈夫…だから」
ははは、と乾いた笑いを浮かべて、俺はその場から逃げ去りたいと思った。
これ以上迷惑だとか思われたくない。
進路に飯倉がいるから俺はジリジリと後ずさる。
「はあ?…お前らなんか延岡に言ったのかよ」
ふっと、飯岡は表情を変え、ものすごく不機嫌そうにクラスメイトに言った。
「…あ、いや、延岡に直接は言ってないけど」
「そこにいるの知らなかったし」
二人はしどろもどろに言い訳をして、なあ?と焦った顔を見合わせている。
「延岡、何きいた?」
飯倉の腕からペットボトルが滑り落ち、その手が俺を掴もうとする。
無意識に俺はその手をはたいて拒絶する。
「…知ってたから、大丈夫だから」
それだけ言うと俺は踵を返し走り出した。
職員室に行って先生の指示通り資料室に資料を取りに行き、時間ギリギリまで粘り教室に戻った。
飯岡が声を掛けたそうにしていたけれどすぐに先生が来たのでそれも出来なかったようだ。
授業が終わればまた先生に資料を片付ける手伝いを申し出て俺はさっさと教室を出る。
また時間ギリギリに次の授業に出て、ショートホームルームが終わったら、俺は脱兎のごとく教室を抜け出した。
けど。
さすが飯倉。
伊達に運動部じゃない。
校門をでる寸前で捕まる。
「延岡!」
腕を掴まれて、動きを封じられる。
「…何」
俺は俯いて飯岡と目線を合わせないようにする。
だって、怒ってるし。
メチャクチャ怖い。
「今日映画一緒に行く約束だろ」
「は?」
ローファーのつま先を見ながら俺は、何を言ってんだこいつと思った。
もう罰ゲームで俺と付き合っているのはばれたんだ。
それがゴールなのかどうなのかは知らないけれど、もう「お付き合いごっこ」は終わらせて良いんじゃ無いか?
「…行かないよ」
「なんで」
「…お前、ら、俺をからかって、罰ゲームとか言って賭けの対象にして、遊んでんだろ」
ぼそぼそとつま先に向かって言う俺に今度は飯岡が呆れた様な声を出す。
「は?」
「だから、行かない」
掴まれた腕を振り切ろうとしたけれど、外されなくてますます力が強くなる。
「あいつら…」
ちっと、舌打ちが聞こえた。
俺宛じゃないようだからそれはよかったなあと思う。
「話、しよう」
飯倉は俺の腕を掴んだまま歩き出した。
「ど、どこにいくの?」
「俺んち」
いつもの自分が使う駅じゃ無い方に連れて行かれる。
「じ、自転車は」
「映画行くから今日は歩きできた」
…歩きでこれるほど近いのかよ。
都会に住んでるんだなあと俺は変なところで感心しながら…
観念して飯倉について行くことにした。
歩いて20分ほどのマンションが飯倉の自宅らしい。
「親、仕事でいないし、弟たちも学童だから当分帰って来ない」
学童に行くほどの弟さんがいるのかと俺は知れた家族構成がちょっと嬉しかった。
まあ、俺たちの「お付き合い」も今日で終わるからそんなこと知れても仕方ないけど。
マンションの一室に案内され、そのまま玄関でやっと靴だけ脱げば腕を離されることも無く廊下のすぐの扉に案内される。
うちと似た感じで机とベッドが置かれているだけでぎゅうぎゅうな感じの狭さだけど、きちんと片付いていて居心地の良さそうな部屋だった。
「何言われたの?あいつらに」
ぽふんとベッドに座らせられて今度は両腕をがしっと掴まれる。
全人類が好きになりそうな笑顔を貼り付けて俺に迫ってくる。
「…かわいそうに、とか、迷惑している、とか」
「俺が?」
こくこくと頷くと、ふん、と飯倉は唇を尖らせた。
「他には?」
「…キスしたら、終わる…」
「ふうん」
尖らせた唇がゆっくりと溶けて、口角が上がる。
かけていたメガネを外されて俺の後頭部に飯倉の手が回されると、そのまま、唇が俺の唇に重ねられる。
「ふ、にゃ…」
変な声が出て恥ずかしいと思っていたら、ぺろりと上唇が舐められて、唇が離れる。
「可愛い…延岡」
「飯倉…」
もう一度、唇が重なると、今度は舌先が俺の歯列をノックする。
「ふあ」
また変な声が出ると、その隙に飯倉が入り込んで来た。
俺の舌に絡めて、ねちゃねちゃと嫌らしい水音をたてる。
上顎や舌の裏を舐められて、俺は頭がぼおっとしてきた。
「かわいそうで、迷惑してるのは、お前って意味」
「え?」
飯倉は俺の首筋にキスをしながら俺の制服のボタンを外していく。
「キスしたら、終わりって言うのは、俺の歯止めがきかなくなって…お前のバージンが終わるってこと」
アンダーシャツをめくられると、飯倉は今度は俺の乳首を舐め始めた。
くすぐったくて身をよじると、「感じてるの?可愛い」とまたキスされる。
「いや、えっと」
「俺ってさ、重いでしょ?SNSの返事無いとすぐ拗ねるし、クラスの奴らに見せつけたくて、わざと昼飯一緒に教室で食うし、みんなの前で頭撫でたりとかさ」
乳首をかりっと爪で引っかかれれば、俺の腰がふわっと揺れる。
「一年の頃から延岡の事、好きだったんだけど、お前俺の事興味ないって顔してたでしょ?」
「へ?」
一年の頃から?
クラスは一緒だったけど好きになられるきっかけなんてあったかな?
それに興味ないなんて、そんなことはない。
そう言えば文化祭の時小さい子連れてスライム作りに来てくれたの、ちょっと嬉しかったかな。
あ、あれ、弟さんだったのか。
「でもさ、ある日気づいたの、科学室の窓からいつもお前が部活見ていること。誰を見ているかは自信がなかったんだけど、俺だったらいいなって、思って」
カチャリとズボンのベルトが外される。
フックも外されて飯倉の手が俺のボクサーの中に滑り込む。
「あ。濡れてる。可愛い」
大人なキスと、乳首の愛撫でおれのちんちんは緩く昇ち上がって、先走りを滲ませていた。
仕方ないだろ。
こんな経験ないんだから。
「罰ゲームの内容は、『好きな奴に告白すること』」
ずるりとボクサーごとスラックスが脱がされ、おれのちんちんはポロリと飯倉の目前に晒される。
俺のちんちんを撫でながら飯倉はうっとりとした顔で言った。
「…好きな奴?」
「そう、好きな奴」
ベッドとマットレスの隙間から飯倉は見た事ないボトルを取り出しながら言った。
「キスしたら、終わり。のべ…充琉の処女、貰うね♡」
トロリとボトルから粘着性の液体が飯倉の手にあけられて、そのままその手は俺の尻の孔へ…
「あ、…やらあ、らめえ♡」
尻の孔、もういいってくらい解されて、うつ伏せにされて腰を高くあげさせられて…
飯倉のちんちんをいれられて背中から抱え込むように抱きしめられる。
乳首弄られながらがしがしと飯倉は腰を振る。
その強烈な快感に俺はもうろれつが回らず変な声をあげるしかなかった。
「や♡、とか、誰が言ってんの?充琉のまんこきゅうきゅう俺のに吸い付いて離さないんだけど♡」
いやいやとベッドの上で逃げようともがくけどもちろん飯倉は離してくれない。
「やぁ、らめぇ…っん…っ奥、むり♡!あぅ…ッはぁーッ…むり、らからあ゛…ッ♡♡そこ、っやらぁ…っ!ひっ♡」
ずぽずぽとちんちんが出し入れされる度に俺のちんちんからもタラタラと精液が吐き出される。
「えー♡やめていいの?充琉の奥、俺の先っぽちゅうちゅうキスしてるけど~♡」
「…っ!やぁ、らめぇ…っん…っ!ああぁっ♡な、なん゛でぇっ!♡な゛んれッ♡!?♡うあ、ぁああっ♡♡んッ、あっ、あんっ♡♡まッ…ま゛ッて゛え゛ッ♡♡♡キち゛ゃう゛う゛ッ♡♡♡」
頭の奥と腹の奥に雷が落ちたような痺れが走る。
「あ~可愛い。マジ可愛い♡やべぇ」
「んんん…っ!やぁ、らめぇ…っはぁーッ…あぅ…ッふぇ、きもち゛ぃのこわい゛ぃッ…!♡♡」
「♡♡♡♡♡怖くない、怖くないよ。気持ちいいだよ、充琉♡」
「ん…っ!…っ!あっ…飯倉あ♡はぁーッ…な、なん゛でぇっ!♡やめ、あ゛ぁっ♡おかし゛く゛な゛る゛ッッ…♡♡あ゛っ♡♡お゛っ、ん゛んっ!!ひっ」
俺の腰を掴む手に力がはいりパンパンと打ち付ける音が早くなり、俺はぎゅうっとシーツを掴んだ。
「ああ、ら、♡ら、めえ!…い、イクからあ」
「俺も♡」
ゴン、と腰が引き寄せられた途端、ゴム越しの熱い滴りが俺の腹の奥に打ち付けられる。
「あ…♡♡♡♡」
俺のちんちんも精液を吐き出した。
仰向けにされて、ちゅうちゅうと顔中、身体中にキスが落とされる。
「好きだよ。充琉♡」
汗まみれでも爽やかな笑顔で初めて好きと言われた。
「…俺、も」
俺も飯倉の背中に手を回して抱きついた。
□□□
俺、飯倉朝陽には小学生の双子の弟がいる。
俺が通う高校の文化祭はご近所さんにも開放されていて俺も小さい頃は親に連れてきて貰っていた。
模擬店やステージ発表を見るのが好きだった。
今年は俺が入学した事もあって弟二人は俺に校内を案内して貰うんだと張り切っていた。
まあ、兄ちゃんのクラスの「峠の女装団子茶屋」の当番が終わったらな。
約束通り当番が終わるとちび達二人を連れて俺は校内を回った。
チョコバナナ食べたり、お化け屋敷に入ったり、模擬縁日を冷やかしたり。
そんな中で寄った科学部。
スライムを作る~と二人が張り切っている。
同じクラスの奴が白衣を来て客の相手をしていた。
延岡充琉。
窓際の一番前の席。
前髪とメガネで顔の半分は隠れてる目立たない奴。
目立たないけどしゅっと背筋を伸ばして授業を聴いている姿に少し好感を持っていた。
科学部だったのか。
女装茶屋の当番にいないと思っていたら、文化部。
文化祭では文化部に所属している奴は部活の出し物優先での活動になる。だからクラスの出し物には参加しない奴がほとんどだ。
延岡はでも俺に気づいてぺこりと頭を下げた。
あれ?
なんか可愛い。
チビ達にスライムの材料を渡して「何色にする?色選べるよ?」なんて丁寧に対応している。
二人も、楽しそうにねちゃねちゃと、スライムの材料を混ぜている。
ああやっぱりちょっと可愛いなあなんて思いながら見てしまう。
白衣もなんか似合ってる。
チビ達に向ける笑顔も可愛い。
前髪もう少し切るかあげればいいのになあ、なんて思って見ていたら、教室を半分に区切って使っていたブースから「わ~!」とか「きゃ~!」とか、悲鳴が上がる。
「延岡、避けろ!」
「へ?」
誰かが呼んだ声に延岡は振り向くが、その瞬間、バシャリ!と延岡に何か液体が降りかかる。
「うわ!」
「ごめん!延岡大丈夫か!」
どうやら実験していた器具から水が吹き出しそれがモロに延岡に直撃したようだ。
「俺は大丈夫じゃないけど…飯倉とちびちゃん達は、大丈夫?」
メガネを外し、渡されたタオルで頭を拭きながら俺たちを気遣った。
「あ…」
やっぱり。
メガネを外し、前髪をあげた姿はとても可愛くて…
俺は延岡に恋してしまった。
元々授業を受ける姿勢が好ましいと思っていたけどそんな事があってから目で追うようになれば例えば授業中当たって書かされた板書の文字や先生に頼まれた資料をみんなに丁寧に配る所や、化学室の窓の向こうで真剣に何か議論している姿や…
全て五月雨式に好きになっていく。
そして気づく。
延岡が時折化学室の窓からじっと我がハンドボール部を見ている事に。
俺を見てくれてたらいいなあと思っているうちに二年に進級してまた同じクラスになった。
ハンドボール部兼クラスの連れとカラオケに行って、変な賭けをした。
「次の順番で一番点数高かった奴罰ゲームな」
「よかったら罰ゲームなのかよ」
ゲラゲラ笑って罰の内容を決める。
「なんにする、飯倉」
「あ…」
だったら。
きっかけを。
「好きなやつに告白にしない?」
「え?飯倉、好きなやついるの?」
「好かれてるやつ、かわいそう。飯倉クンの愛重いからな~」
二人にゲラゲラ笑われて。
俺は今までのカラオケで一番高い点数を叩き出した。
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