魔王をしばいたその後で?

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魔王をしばいたその後で?

「やっべぇ、色々どうしよっかな……」 夏草生い茂る草原で――それこそ、文字通り草を枕にしながら『勇者:龍坐(りゅうざ) アオイ』はそう呟いた。 ここは異世界エスタール。 所謂、現実の若者達やヲタク達が1度は転生を夢見る剣と魔法の世界だ。 その異世界に魔神を倒す為の勇者として、女神により召喚された元OLで24歳のアオイ。 彼女は、与えられたチートなスキルをフルで使用し、魔神を追い詰めた――のだが、 「まさか、あそこで魔神に泣いて土下座されるとは……」 魔神を討ち取る寸前、その魔神に「命だけは助けてください」とどえらい勢いでスライディング土下座をして懇願されたのだ。 「いやいや、だって普通に死にたくないじゃないっすか、アオイ先輩」 草原に寝転ぶアオイに声をかけるのは、魔神――否元魔神。 現荷物持ち兼パシリの魔神ルグゥスである。 彼はわざとらしーく下手に出つつ揉み手をしながら、へこへことアオイに頭を下げた。 「その節はもう、本当に感謝してるんですよぅ。偽の死体まで用意して頂いて。私がこうして生きていられるのも……何から何までアオイ先輩のお陰っす、はい」 どっかの体育会系の部活の後輩のように異様にへりくだりながらそういうルグゥス。 ちなみに、こんな草原に魔神である彼が堂々といても通行人達が一切驚かないのは……彼の姿が一般には間違って伝わっているからである。 市民達には、角の生えた紫の皮膚の巨大なゴブリンのような醜悪極まりない姿で伝わっている魔神ルグゥス。 だが、当の本人はと言えば――背中に黒い蝙蝠チックな翼があることを除けば、一切普通の人間と変わらない姿をしていた。 寧ろ、黒髪黒目である分日本人的というか、アオイにとっては親近感を覚えるような容姿である。 と、そんなルグゥスが、依然寝転んだままのアオイに声をかけてきた。 「でも、この後はどうするんです?先輩。勇者だし、後継者とか育てたりしちゃうんですか?」 「んー。それが問題なんだよなぁ」
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