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それではみなさん、さようなら
あるところに一人の偉大なる魔女がおりました。
魔女は人の身にはあまりある大きな魔力を宿しておりました。またその身体はそれを上回って余裕を残すほど、大きな器でありました。
それゆえ彼女にとって為せないことはほとんどなかったのでした。
世界から望まれ、また畏怖され、彼女は良くも悪くも生涯、人から追われ続けました。
彼女にとって、住み慣れた世界とは退屈なものでした。
刺激と呼ぶほどの困難もなく、かといって死ぬには死後の世界は未知過ぎて、もしも死の後も尚似たことを繰り返すことがあれば発狂してしまいそうな程には、彼女は抗いがたい死を迎えるまでの時間を苦痛に感じておりました。
そこで彼女は思いついたのです。違う世界へ行ってみようと。思いついたそれは、彼女にとってとても魅力的なもののように思われました。
生きることも、死ぬことも。生きる彼女にとって何より恐れるべきは退屈であり、それが繰り返されることでありました。
そして彼女は消えました。跡形もなく。そこには、一つの財産さえも残しませんでした。
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