もっとも苦手な彼と一夜を共にしたならば

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神園さんが私の隣に腰掛け、じっと見つめてくる。 レンズ越しじゃない彼の瞳はブラックダイヤモンドみたいに綺麗で、胸がとくんと鼓動した。 「……うん」 緊張で身を固くしながら、目を閉じる。 そのときを待ったけれど。 「よしよし」 「……ふぇ?」 神園さんは私を抱き締め、あやすみたいに背中をぽんぽんと軽く叩いた。 おかげで、変な声が出る。 「なんか知らんが、よしよし」 しかし神園さんは、今度は私の頭を撫でている。 「かみ、ぞの、さん?」 彼がなにをしたいのかわからなくて、困惑した。 私は、抱いてくれと頼んだのだ。 なのに、これって? 「とりあえず、泣け。 泣いて喚いて、愚痴も怒りも後悔も、吐き出してしまえ。 全部俺が、受け止めてやる」 私の髪を撫でる、神園さんの手は優しい。 おかげで、気持ちが緩んだ。 「ふぇっ」 「うん」 「ふぇーん」 泣きだした私を包み込んでくれる、神園さんは温かい。 それで、涙と一緒に気持ちをぽろぽろこぼれ落とした。 「信じてたのに。 別れたって言ってたのに」 「そうか」
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