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10
「今日は、それは……使わないで……」
千里は箱からコンドームを取り出そうとする忠雄に後ろから抱き付いた。
「でも……それだと子供が……」
「いいの……。今日はそれに、排卵日……だから」
千里が忠雄をベッドの上に押し倒すと、忠雄はキョトンとしていた。
耳元で囁く。
「子供が、欲しいの。今日ね、産婦人科に行って検査してもらったのよ。そうしたら、体には何も問題ないって……だから……」
忠雄はこくりと頷くと、千里を抱きしめた。
直接触れ合う肌から、色々なものが伝わる。
体温。
鼓動の早い心臓の音。
そして、いつもより硬くなっている下腹部。
千里がモノを自らの中へとすすんで挿入し、甘い声を上げると、忠雄はそれに刺激されたのか、千里を押し倒して体位を変えると獣の様に激しく腰を動かし始めた。
ベットの脇の照明の薄暗い明かりが影絵を作り出して、行為が終わるまでのレイトショウを壁に映し出している。
それを見ながら千里は、今日飲んだ避妊薬の効果がちゃんと出るように祈った。
その『祈り』は、叶えられた。
忠雄との行為の後にきた生理のことを、千里は忠雄には伝えなかった。
生理が終わると同時に千里は、避妊薬を飲むことをやめた。
そして、忠雄との夜の生活も……やめた。
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