◆00. prologue【義章視点】

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◆00. prologue【義章視点】

『この度は、夫のことでみなさまに大変なご迷惑とご心配をおかけして、大変、申し訳ありません』  ――嘘だろ? とテレビ画面を凝視した。――何故、『妻』が。 『報道されていた点については一部を除き、すべて、事実です。  夫が不倫をしていたのは――事実です。  妻として。大変、申し訳なく、思っております』  激しくフラッシュが焚かれる。その渦中にいる女性は、まるで喪服のような黒いスーツを着ていて、映画の主人公のようだ。この場に適した神妙な表情も、女優のようだ。――実際女優、なんだが。しかし、何故、『妻』が。  ――おまえのほうも、不倫をしたのは、事実なのに。  どうして、おれのほうだけ、やり玉にあげられているんだ? 『世間様を騒がせており、お詫びのしようもございません。夫につきましては、活動を自粛させて頂きます。――なお、わたしたちには大切にしている家族がおります。ですので、どうか――そっとしておいて頂けると――』  以降の台詞が頭の中を上滑りしていった。『おまえ』だって、『加害者』なのに。まるで『犯罪被害者』の顔をしている――  嘘をつけ。この、エセ女優が。
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