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途生
どうせ何にもなれないなら、なににもならなくてもいいんじゃない?
君に言われた言葉が、頭にこびりついて離れない。
君の考えていたこと、価値観、論理感何もかもがこびりついて。
それはきっと汚れとか錆なんかじゃなく、細胞とか血とかそんなイメージの伝えづらい何かで、伝わらない何かで、伝えたくない物だった。
周りの友達や知り合いがどんどん大人になり、責任を持ち何かになろうとしている中で俺は何にもなれずに生活ギリギリで、なんで生きてるかもわからずに、生きてる理由すら見つけれずにひたすらに時間を捨てている。
勿体なくないのかと言われればもちろん勿体ない。
不安を感じないのかって言われたらもちろん不安だって焦りだって感じてる。
ただひたすらに、生きる理由も死ぬ理由もない。
俺だってやってみたい事とかなりたいものだってあったことはある。多分。
だからと言って今それを目指すのかと言われれば別にって思うし、じゃあどうするのって言われたらこっちが聞きたいくらいだよ。
どうすればいいんだよ。
目に映る世界がほんっとに灰色で、面白くないし楽しくもない。
読んで字のごとくただ生きているだけ。
生きてるだけでいいだろ、死にたい人だっているんだぞ
って言う奴はいる。じゃあお前が助けてあげろよって思う。
だから何が言いたいのかっていうと、これから話す物語は
とてもつまらなくて
誰にも理解されなくて
食い違って
支離滅裂で
矛盾だらけの
人生みたいな話。
学生の頃は別になんも考えてなかった。
多かれ少なかれ友達はいたし、頭いいわけでもないけど対して不自由もないし、将来のことなんて大して考えてもなくて、別にどうにかなってるだろうって、人生についてとか生きる事とか深く考えたことはなかった。
大人になってから、というよりも周りに大人と認識される歳になってからかな、自然と息苦しさや不安とか焦りとかあふれてきたんだ。
こんな何もない田舎にいる限りいやでも周りとの差が目につく。
周りとの比較なんて嫌でもしちゃうし、比較したらしたで自分のダメなところが浮き彫りになる。
それが嫌ならしっかりしたら?って話なんだけど、しっかりできるならとっくにしてるって話で。
そんなことを毎日考えながら暇なときはずっと寝て、人目が気になるから夜中に外出てふらふらあてもなく散歩。
たまに何か思いついたら、文字にして小説書いたら印税でがっぽり稼げないかなーなんて、ずっとそんなこと考えてる。
そんな事考えながら空がある程度明るくなるまで家に帰らないで、ボケっと歩きながらいろんなことを考える。
夜中に家にいると、考えなきゃいけない考えたくないことまで考えてしまうから。もうほんとに嫌なんだ。
そんな生活をしばらく続けてた。
ある日、適当に歩いてたら取り壊されてない小さい廃ビルを見つけた。
別に不法侵入がどうとか考えるような利口な頭じゃないから、好奇心で中に入ってみた。
あちこちボロボロだけど、急に崩れそうってわけでもなくただただしばらく使われていないって感じ。
階段をひたすら上がって、なんでこんなことしてんだろってくらい疲れながら一番上まで来た。
そこには南京錠が壊れた状態でチェーンにぶら下がってて、それをほどくだけですぐ開きそうな扉が一枚。
ここを開けたら屋上なんだってすぐ理解できた。
少し期待しながら扉を開けると、別に大したことのない見慣れた街を上から見下ろすだけのスポット。それでも何もないよりは心躍る。
手すりにもたれかかって真下を見る。
改めてある程度高いことを確認した後、左のポケットをまさぐり煙草を取り出し火をつけた。
なんか少し特別になったような感じと、何してんだろうなぁって気持ちが喧嘩してる。
負けたのは特別感。
くだらないなって思いながらゆっくりと時間が過ぎるのを待つ。
そういえば俺って何になりたかったんだっけとか、何になれたらこの灰色の罹った景色に色がつくのかなとか明確な答えが出せないものについてしばらく考えていた。
ずっと外の景色を見ながらそんなこと考えていたら、急に俺が通ってきた屋上への扉が開いた。
俺は最初管理してる誰かがきたのかと思って、焦ってタバコの火を消した。
大慌てで謝る準備までした。
でもどうやら管理の人でも関係者でもなく、なんならタバコに火をつけながら髪の長い女性がこっちを向く。
俺と目があって驚いた顔をしながらまず一礼。
そしてこっちに近づいてくる。
こんな遅い時間に女性が1人?
不思議でたまらない。
てかもう怖い。
「私以外にここを利用してる人いたんだ。」
なんと話しかけてきた。
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