隠し子

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「あの蔵、一応生活はできるけどさ牢屋レベルの最低な環境じゃん。やばいでしょ。お母さんの対応」 と愚痴ると婚約者ははははと笑う。 「仕方ないよ。あの子は……」 と言って口をつぐむ。はっと顔色が変わるのでなんだろうと思って蔵を見たらどす黒いオーラが漂っていた。  先程までは特に何もなかったのにと驚いていると婚約者が私にお札を三枚渡してきた。 「杏子、こいつをちゃんと持ってろ!とにかく近くの部屋に閉じ籠って」 とあわててその場を走り去る。屋敷のどこかから、誰かがドタバタとした物音が聞こえてきた。 「緊急事態かよ……」  とっさに後ろの襖を開けて中に入った。 「……あー、ここは」  電気をつけるとそこにあるのは先祖たち、亡くなった人たちの部屋だ。  通称遺品部屋。  故人の絵や写真の他、遺物などが飾られている。  うちの家は霊感が強い。  そのため、古くから霊感に関する事業をしていて大きくなった。  ご先祖様や亡くなった人たちの遺物には力が込められているらしく、中々捨てられない。  そのため、神社やお寺さんに時々は供養をして力を弱めているのだ。  私の婚約者は神社の三男坊で、彼もお祓いができたりする力の持ち主。  平和的な解決ができる、わたしにとっては理想の男だ。  平和ってとても大切なことだと思う。  私にも平和的に解決する力があったらなあと思うけど……。 「だめだめ、暗いことばかり考えたら変なもの引き寄せてしまうやんけ」 と気分を切り替えて、遺品たちを見る。  モノクロ写真からカラー写真、何やら高い価値がありそうなものから子供のおもちゃへと私は目を移した。  その子供のおもちゃはミニカー、近くには幼い男の子の写真と若い女の写真がある。  この二人は親子であり、母さんの妹、つまり私の叔母だという。  うちの家の故人の中でもっとも若い二人が気になった私は母さんに尋ねたことがある。  この人たちはどうして亡くなったのかと。  母さんは一瞬、言葉を詰まらせて顔をはっとさせる。  それを見た瞬間、尋ねてはだめなのかと思って謝ったが簡単に教えてくれた。
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