隠し子

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 人が死んだ後には何かが起こりやすい。  うちみたいに大きな家のところなら、何か起きてもおかしくない。  私が隠し子について聞いたときは、ああやはりかと思った。  父さんについては全く信頼してないわけではない。  浮気なんてするわけないだろうと思うくらい、私の両親はとても仲良しだからだ。  大きな家には財産がたくさんある。  大抵の詐欺師は子供を使って騙してくるものだ。  これまでに何度も詐欺に出会った経験から、まず隠し子が来たときは事情聴取。  子供に何か痣や傷などがあるならば、警察だけではなく児童相談所に連絡していく。  それから子供は幸せになる道を見つけていき、けしかけてきた大人は逮捕されるのだ。  それからは周りからは慈善家として認識されてしまい、子育てのサロンとか支援とかするようになった。  この経緯を間近で見て来た親族たちは後に子供関係の仕事に就く人が多くなったとか。  隠し子詐欺がたくさん来るのはある意味不幸だと思うが、うちの家がすごい善人の集まりとして認識されるようになっていくから幸いかもしれない。  今回も例外が起こらずに子供が現れた。  どんな子なのだろうと思ったけれど、親戚たちが必死に隠したため見る事ができなかった。  まあ、子供は見るなということらしいが私はとっくに成人。  いつまでも私を子ども扱いするとはと不満で少しだけむくれてしまった。 「まあ、同情心とか湧いたらいろいろと大変だからねえ」  婚約者に愚痴るとまあまあとなだめられる。 「元々今日は忙しいからそんな暇ないし、どっちみち子供には会えなかったと思うよ」 「まあ……そうだけどね」  今日は通夜、明日が告別式で会場は家。  家がとても大きいものだから葬式ができるのだ。  親戚たちはそのまま客室に泊まっていき、今は落ち着いているところ。  先ほどの食事風景はすごかったなあ。  おじさんたち、相変わらず酔いが早いもの。 「でもさ、子供を蔵に閉じ込めるなんてやりすぎじゃないの?」  私は庭の片隅にある蔵を見て思った。  招かれざる客人こと、隠し子(疑惑)は大抵客室に通される。  しかし、今回の隠し子はずいぶんと厳重に閉じ込めていた。
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