デジタル遺産

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 姉の悪事を知ったのはほんの偶然だった。  姉のパソコンやスマホを探っていた時のことだ。  姉は難病を発症し、身動きができなくなった。  姉の退屈さを間際らすためにパソコンやスマホなどの電子機器を両親が与えた結果、才能が発揮されることになる。  姉は創作サイトで小説や絵を発表し、そこそこ有名だったらしい。  そういう創作については家族はなんとなく知っていたので、姉が死んだときにはちゃんとその界隈の人たちに知らせようと思ってパソコンやスマホをいじる。  パソコンに詳しい妹の私がさっそく姉のプライベートを覗いたのだが……。 「なにこれ?」  デジタル遺産はたくさんあるし、どうやって処分しようかと悩んでいたのだが謎のファイルに遭遇する。  粛清という名前のファイルにはたくさんのメモがある。  メモの内容はIDとパスワード、それとメールアドレス。  その数は100以上、こんなに姉は交流が広かったのかと気になった私は一つ一つを調べてみた。  「凍結……?」  大半は凍結していたが、生きているアカウントもあったのでそっちにアクセスしてみる。  ぽちっと開くと信じられないものが出てきた。  私がたどり着いたのはSNSのアカウント、そのつぶやきは罵詈雑言であふれていた。  様々な人に突っかかっていたらしく、どれも最低なものだった。 「どうしたの?」  姉の悪事に驚いて叫んだ私に母が入ってきた。  私は黙って証拠を示すと母も驚愕の表情を浮かべる。 「なにこれ、それにこの大量のメアドは……」 「これ、犯罪だよ。お姉ちゃんが生きていた頃はまだ法案が成立してなかったけど」  ネットの中傷は昔からある。  しかしとある有名人が自殺したことによって厳罰化の動きになった。  その時はひどいなあと思ったし、姉もニュースを見ながら許せないと言っていたがまさか当の本人がやっていたとは……。 「こんなの見逃せない」  それからの母は行動が早かった。  さっさとネットに強い探偵に相談をして、姉が犯した罪を調べてもらった。
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