デジタル遺産

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 家族の中で姉に対する気持ちはなくなっている。  母は産むんじゃなかったと泣き出し、父も冷淡に姉の遺品を次々と捨てている。  しかし、誹謗中傷の証拠に関してはどうすればいいかと悩んでいた。  生きているうちに謝罪させたかったと後悔に苛まれている。  探偵に連絡して被害者に謝りに行ったらしい。  遠方の人には手紙を出したが、どれも送り返されていた。  直接会った人からは本人の謝罪が欲しかっただのと言われる始末。  本当に姉は一家の恥として、最低なものを残していった。  何か良い方法はないか、姉の遺品をどうしたらと悩んでいたところにたどり着いた都市伝説。  これが果たして実際に起こるかどうかと悩んでいたところに玄関のチャイムが鳴った。  母が応対しているが、戸惑っていて埒があかない。  代わりに父が応対していた。 「回収人……ですか」 「ええ、お嬢さんが残していった誹謗中傷のことについて」  客人の一言で両親はすぐに家に通すことにした。  目の前にいるのは2人の男女。  都市伝説では鬼と言われているが、どうみてと人間にしか見えない。 角がある気配はなく、オールバックの男と一つ結び女という2人組だ。 ザ・公務員か官僚という見た目であり、たかが都市伝説だから真偽の部分がところどころにあるのだろうと思っていた。 「私たちはこういう者です」  名刺を渡してきたので確認してみる。  地獄裁判所 証拠収集係と。 「地獄から……ってことはあの都市伝説は本当なんだ」 「どうしたの、都市伝説って」 と母が聞いてきたので、私はネットでかじった程度のことを説明する。 「妹様のおっしゃるとおりです。私たちは今は人間の姿に扮していますが、地獄では鬼として生きています」 「突然この世界に空想上の生き物である鬼が出てきたら、大騒ぎになりますからね。周りに配慮した結果なのです」 という事情らしい。  へえ、そうなんだと私たちは納得して、鬼からの話を聞く。 「娘は地獄にいるのですか?」  母の質問に鬼は首を縦に振る。  それを見た母は自業自得ねと想いを吐き出した。 「人様に迷惑をかけて、のうのうと隠して死んだもの。生きていたら土下座させたかったわ。いや、あの子を殺していたかもね」 「おいっ!」  過激な発言に父は少し咎めたが、あまり強く言わなかったのは同じことを思っていたからなのだろう。
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