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「何が悪かったのか、不満があるなら私たちにぶつけて欲しかった。あの子が嘘をついたまま死んでいったの許せない。絶対に」
と堪えきれなくなったのか、母は退席した。
「家内がすみません」
と頭を下げると鬼の2人は気にしないだくださいと落ち着いた態度を見せる。
「大丈夫です。あなたたちを見ていると罪がないのを感じました。どんなに尽くしても本人の気質という問題もありますから」
鬼ってとても厳しいイメージがあるが、2人からは怖い雰囲気を感じない。
むしろ加害者の家族である私たちを気遣ってくれる、優しい方たちだ。
「申し訳ございませんでした。本当ならば生きている間に私たちでやるべきことをあなたたちに任せるなんて」
「いえ、あまり気負わずにしてくださいませ」
その後は時々落ち込むながらも父は親としての想いを語り、鬼の2人は静かに聞いた。
「こうなっていくとあの子の四十九日について考えなければなりませんね。うちは仏教徒ですから、やるべきだと思ってました。しかし、あの子の冥福を祈るほどの心の余裕はないですね」
父のぼやきに男の鬼はこう答える。
「無理にすることもありません。これまでに大きな罪を犯した人の家族に出会いましたが、あなた方と同様に四十九日を取りやめる方がいました。お寺さんからはいろいろと言われるかもしれませんが、今は個人の自由の時代ですからね。私たちもそれを理由にあなた方を地獄に落とすつもりはありません」
父は悩みが解決したようで安堵の表情になる。
ここしばらくは曇った表情ばかりだったから私も安心した。
母の様子を見るため、少しだけ相手をするよう父はその場を後にする。
今度は私の番だ。
意を決して私は投げかける。
「姉はどうしていますか?」
その質問に二人の鬼は困ったような表情をした。
答えるべきかどうかと悩んでいるようだ。
もしかして聞いてはならぬ質問だろうかと私はあわてて無理に答えなくていいと断る。
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