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女の鬼はすみませんと謝った。
「ごめんなさい。私たちも伝えたいところはありますが、許されるところと許されないところがありますので」
「その、許される範囲で聞くことは可能ってことですよね」
「ええ……」
男と女の鬼は互いに目配せしてから答えてくれた。
「そうですね……簡単に言うと毎日取り調べを受けている状態ですね。本人は否認していますが、閻魔様の目にははっきりと移ってますから……」
「とにかく自分は被害者だとか、精神的に病を抱えていたとかで罪を逃れようとしていますけど、地獄の常識はこことは異なりますからねえ。どっちみち極刑は免れないはずです」
家族の前では見せなかった悪態が、向こうで晒されているとは。
それを知ったのと同時にどす黒い感情が沸き上がる。
「姉は今とても惨めなんでしょうね。人間だった頃の面影なんてないくらいにぐちゃぐちゃで……ただの想像ですけどね。もう、あの人を思いっきり罰してください。家族としてのお願いです。母と同じく、私も説教してやりたかった」
あの人は何も考えなかったのだろうか。
残された家族のことについて。
犯人が死んだら矛先は一番近くにいた家族に向かうってことを。
私の胸に抱えていた想いを吐き出してすっきりしたのと同時に、母と父が戻ってきた。
それから二人の鬼は姉が残した遺物、デジタル遺産について引き取ると話を続ける。
魔法を使って一気に姉の遺物を地獄に送った後、二人の鬼は会釈をしてその場を後にした。
あれからしばらくして私たちに姉の陰がなくなっていくのを感じた。
結局、姉の四十九日を行わないことにして過ごしている。
お寺さんからいろいろと説得されたけど、私たちの心は決まっていた。
もう、姉のことについては何も考えないと。
姉の被害者について救済を申し出るが、被害者たちも姉が亡くなったことについて考えるようになったのか、私たち家族に何か言うこともなくなんとなく和解に至った。
姉は今、地獄で償いを始めているのだろうか、そういうことを考えながら私たちは生きている。
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