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プロローグ
灰色の冬空を見上げれば、小さな白い水玉模様が降ってくる。重力に沿ってふわりふわりと舞いながら、無邪気に笑う明香の吐息に溶けていく。
雪道にも足跡はみっつ。不細工な雪だるまもみっつ。笑うたびに溢れる吐息もみっつ。いつも三人一緒だった。
「はるきーとうまーはやく!」
足の膝まで積もった雪に転びそうになりながらも降り注ぐ雪を見上げては、明香が空に手を伸ばしてはしゃぐ。
「めいか、あぶないから」
そう言って、今にも転びそうな明香の手を握るのは春樹の役目だった。そんな二人を眺めながら、歩くたびに長靴に勝手に滑り込んでくる雪の冷たさを足先に感じながら、俺は、二人の後をついていく。
明香に見惚れてた俺の顔にボシャッと小さな雪玉が当たる。
「とうま、おそい!」
頬を膨らませて、黒い大きな瞳が俺を映す。
「うるせー、いもうとのくせになまいきなんだよ!」
雪玉投げつけといて何で明香が怒んだよ。
不貞腐れた俺を見ながら、春樹と明香が顔を見合わせて笑う。
怒っても笑っても出る、片側だけのえくぼ。
胸まで伸ばされた黒い艶やかな髪の毛。大きな澄んだ黒色の瞳。真っ黒の髪が揺れて真っ白な世界が彼女だけを照らし出す。
明香の真っ白な肌が、降り積もる雪と重なって、彼女を白だけの世界に連れて行ってしまう。
ーーーー冬馬、と伸ばされた手を掴むことなく。
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