8人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
ワイパーのキュッキュッという少し不快な音に混じってラジオが聞こえる。
「……三日間の天気予報です。明日は晴れますが、明後日は再び雨になるでしょう……降水確率は……」
「また雨か」
小さく息をついた。赤信号になったタイミングでCDに切り替える。俺らのファーストアルバムが流れ出した。サビに入ったタイミングで、いきなり音楽が止まった。
「ん?……電話?」
俺のスマホとカーナビは連動していて、電話が来たとき自動でカーナビに転送されるようになっている。
受話器アイコンをタップすると「もしもし」とやや低い声が響いた。
「親父。急にどうしたんだ?」
「詩音……」
「ん?」
キュッキュとワイパーの音がなる。ワイパーが静かになった瞬間、親父はようやく話を続けた。
「急なんだが、明日か明後日、時間あるか?」
「え? まぁ明日は少しなら……」
信号が青になる。アクセルを踏み締めた。雨音はますます増している。
窓ガラスに雫が伝って流れていく。
「ちょっとだけでいいから実家にこないか……お前に話したいことがある」
「話したいこと?」
「あぁ」
全く見当がつかない。だが、親父の声はいつもより深く、明日少しだけ実家に行くことになった。
最初のコメントを投稿しよう!