雨音のはじまり

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 ワイパーのキュッキュッという少し不快な音に混じってラジオが聞こえる。 「……三日間の天気予報です。明日は晴れますが、明後日は再び雨になるでしょう……降水確率は……」 「また雨か」  小さく息をついた。赤信号になったタイミングでCDに切り替える。俺らのファーストアルバムが流れ出した。サビに入ったタイミングで、いきなり音楽が止まった。 「ん?……電話?」  俺のスマホとカーナビは連動していて、電話が来たとき自動でカーナビに転送されるようになっている。  受話器アイコンをタップすると「もしもし」とやや低い声が響いた。 「親父。急にどうしたんだ?」 「詩音……」 「ん?」  キュッキュとワイパーの音がなる。ワイパーが静かになった瞬間、親父はようやく話を続けた。 「急なんだが、明日か明後日、時間あるか?」 「え? まぁ明日は少しなら……」  信号が青になる。アクセルを踏み締めた。雨音はますます増している。  窓ガラスに雫が伝って流れていく。 「ちょっとだけでいいから実家にこないか……お前に話したいことがある」 「話したいこと?」 「あぁ」  全く見当がつかない。だが、親父の声はいつもより深く、明日少しだけ実家に行くことになった。
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