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──ザァー…… 雨音が鳴り響く夜、狼の耳を持つ一人の少年は崖の上に立っていた。 その目には光がなく、ただ下に広がる暗い森を映していた。 ゆっくりと一歩、足を前に踏み出した時、微かに泣き声が聞こえた。 昔の自分を思い出させる様な幼い泣き声に思わず足を引っ込めた。 辺りを見渡し、声のした方に進んだ。 段々と声が大きくなる。 すると、大きな木の幹の傍で体を小さくし震えている"何か"が見えた。 "何か"に近づくとそれは小さな悲鳴を上げて更に震えだした。 「……大丈夫。怖くないよ」 またしても自分の姿と重なった少年は優しく声をかけた。 怯えながらも顔を上げ、目を此方に向けた"何か"には 小さな長い耳が生えていた。
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