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この学園は無駄に広い。 教室を確認するために校内図を見て愕然とした。 普通科棟だってたくさん余っている教室があるのに、特進は別棟ってどういうことだよ... これじゃ普段の学校生活ですれ違うこともないじゃないか。 「私はこちらですね。では失礼致します」 教室が遠いイチカはさっさと行ってしまった。 「橘くん、僕らの教室ここみたいだよぉ」 この学園に知り合いなんて僕以外には一人もいないのに。 心細いとかそんな感情は無いのか。 「席はここだねぇ」 イチカはいつもそうだ。 僕のことを頼ってくれたことなんて無い。 特進を受験することも相談してくれなかった。 それに... "あの時"ですら一人で全部を背負おうとして... 「橘くん、セレモニーホールに移動だって」 セレモニーホールって何だよ。 無駄に建物増やしやがって。 広過ぎて特進クラスの列なんか見えそうにもないじゃないか。 「橘くん...退場するみたいだよ?」 悶々としているうちに入学式は終わっていた。
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