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教室に戻って自分の席に座る。 クラスメイト達は楽しそうに自己紹介し合っている。 ここにイチカが一緒に居てくれたら。 何度妄想しただろう。 鈴野と橘だから席は近いだろうな。 隣の席だったら... 授業中に真剣な横顔が見れたり。 時々目が合ったり。 はぁ、なんだか虚しくなってきた。 「橘くん、ホームルーム終わったよ?」 ツジが声を掛けてきたのと同時だった。 「あの子誰?」 「可愛い!」 「知らない」 「外部生?」 「綺麗な子」 廊下の辺りで騒めきが起こる。 人を掻き分けて廊下に出ると予想通りイチカが待っていた。 「坊ちゃん、お疲れ様でした」 周りの喧騒など気にも止めず、背筋を伸ばして立っている。 「帰るか...」 「あっ、あの...私今日は」 「ハナエの所だろ?僕も一緒に行くよ」 「ありがとうございます」 少しだけ俯いて、イチカは寂しそうに笑った。
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