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グラスにアイスコーヒーを注ぎ、
「入りましたよ」
と声を掛けると、ゆっくりと立ち上がり、ダイニングテーブルにやって来てストンと座った。
しかし、まだ目を開けてはいない。
テーブルに伏せる上杉さんに、私は慌ててコーヒーの入ったグラスを避けた。
「先生…。今日は本当にごめんなさい。私の我儘に付き合わせてしまって…」
起きてるのか寝ているのかわからず、私は上杉さんを見て苦笑した。
「いいえ。楽しかったですよ…」
私はタバコを消してそう答えた。
すると突然、上杉さんは起き上がった。
「本当ですか…」
と私に訊く。
「勿論です。上杉さんの彼氏役も出来ましたし。束子ももらえたし」
「束子…」
上杉さんの記憶の中には既に束子の存在は無かった様だった。
「束子…」
こりゃダメだ…。
私は上杉さんを覗き込む様に見た。
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