ホワイトムスクの午前三時

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グラスにアイスコーヒーを注ぎ、 「入りましたよ」 と声を掛けると、ゆっくりと立ち上がり、ダイニングテーブルにやって来てストンと座った。 しかし、まだ目を開けてはいない。 テーブルに伏せる上杉さんに、私は慌ててコーヒーの入ったグラスを避けた。 「先生…。今日は本当にごめんなさい。私の我儘に付き合わせてしまって…」 起きてるのか寝ているのかわからず、私は上杉さんを見て苦笑した。 「いいえ。楽しかったですよ…」 私はタバコを消してそう答えた。 すると突然、上杉さんは起き上がった。 「本当ですか…」 と私に訊く。 「勿論です。上杉さんの彼氏役も出来ましたし。束子ももらえたし」 「束子…」 上杉さんの記憶の中には既に束子の存在は無かった様だった。 「束子…」 こりゃダメだ…。 私は上杉さんを覗き込む様に見た。
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