キスとは好きな人とするものです

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それは、会社から支給されている名刺だった。 なんでこれがお礼なんだろうと何気なく裏を見て、そのメモ欄に書かれている文字に気づいた。 【キス券♡】 赤のハートマークと共に書いてあるその文字を見て、首を捻る。 キス券って、なんなんだろう。 意味わかんないし、あとで小野瀬さんに聞いてみようかな。 なんて軽く考えて、仕事を再開したんだけれど……。 「あ、鶴岡さん」 終業間際、給湯室でカップを洗っていたら、ちょうど小野瀬さんが来た。 「一緒に洗いましょうか?」 「いいの? じゃあ、お願いします」 差し出されたカップを受け取り、また流しへと向かう。 小野瀬さんは私の後ろで、壁に向かってなにかしているようだった。 「じゃあこれ、お礼」 終わって振り返ると、彼がなにか差し出してくる。 それはさっきと同じで名刺だった。 「あのー、小野瀬さん? これってどういう意味ですか?」 今回のも裏に【キス券♡】と書いてある。 やはり私にはこれの、意味がわからない。 「あー……」 長く発し、笑顔のまま小野瀬さんが固まる。 「……言葉どおりの意味だけど?」 「はぁ……」
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