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第11話
11月22日頃であった。
タイに長期出張中のたけのりさんがバンコクの支店を無断で欠勤した上に、閉鎖をする工場の従業員さんたちの再就職のお世話を放棄した後、バングラデシュへ逃亡した。
その後、逃亡先で発生した爆弾テロ事件に巻き込まれて亡くなった。
さらにその上に、たけのりさんが愛人のホステスさんを妊娠させていたことが発覚した。
妊娠したホステスさんは、ヤクザの婚約者であった。
ヤクザ稼業の男3人が家に怒鳴りに来たので、お手上げ状態になった。
この時義父母は、ダンナとたけのりさんの問題をケーサツに頼んで解決をしてもらおうかと考えた始めた。
そんな中で、新たな不幸事が発生した。
ところ変わって、東門町にあります有津屋(あろうつや)公園にて…
時は、夜10時50分頃のことであった。
家出中のあいりさんがひとりぼっちで夜の公園のベンチに座っていた。
その時、派手なシャツを着ている男のグループがあいりさんに声をかけて来た。
怖くなったあいりさんは、逃げようとした。
しかし、男たちはあいりさんの身体を倒した。
「やめてーイヤ!!」
(ビリビリビリビリビリビリビリ!!)
男たちは、あいりさんが着ていたマゼンタのカーディガンと白のブラウスを同時に破いたあと、白のブラジャーを思い切り引きちぎった。
「イヤー!!助けて!!たけのりさーん!!たけのりさーん!!」
男たちは、泣き叫んでいるあいりさんをニヤニヤした表情でかわるがわるに犯した。
それから二時間後のことであった。
家に、あいりさんの初恋の男性のあきとさんがやって来た。
あきとさんは、あいりさんがレイプされていた現場を目撃したと義父母に言うた。
現場が危険な状況におちいっていたから近づくことができなかった…と言うて義父母にわびた。
その時であった。
ボロボロに傷ついた姿のあいりさんが帰宅した。
それを見たアタシは、思わず絶句した。
「あっ…あいりさん…」
ボロボロに傷ついたあいりさんの姿を見たアタシは、全身が凍りついて動けなくなった。
あきとさんは、義父母の前で土下座してわびた。
「ごめんなさい…あいりさんを助けることができませんでした…あいりさんをレイプしていた男のグループが…刃渡りの鋭いナイフを持っていて…」
(ガーン!!)
「ああああああああああ!!」
話しを聞いた義父は、近くにあった金属バットであきとさんの頭を殴りつけた。
「あなた!!」
「おい、早く止めを刺せ!!」
「なんでひどいことをするのよ!!」
「あいりさんをレイプした男の一味だから金属バットで殴った!!」
「違うわよ!!あきとさんは…やめてー!!」
義母の叫びもむなしく、あきとさんは義父に出刃包丁で刺されて殺された。
義父は、殺人罪で逮捕された…
あいりさんがレイプの被害を受けた事件は、ケーサツが別件で捜査することになった。
あいりさんは、療養するために生まれ故郷へ帰ることになった。
義母は、親類の紹介で今治市近郊の老健施設へ移ることになった。
11月28日のことであった。
アタシは、着替えとメイク道具が入っているボストンバッグと財布とスマホと貴重品が入っている赤茶色のバッグを持って家出したあと旭町のバス停へ歩いて行った。
アタシは、バスを乗り継いで松山へ向かうことにした。
これ以上ダンナの実家にいたら…
アタシは壊れてしまう…
アタシは、旭町のバス停から新居浜駅行きのバスに乗って小松総合支所前まで行った。
小松総合支所前から松山方面行きの特急バスに乗り継いだ。
バスに乗っている時、アタシは生まれてからきょうまでの間の人生をふりかえってみた。
ふりかえって見たら、アタシの人生はつまらないことばかりだった…
この先、どうやって生きていこうか…
そればかりを考えていた。
そしてアタシは、12月1日から歩行町(かちまち)にあるマンスリーアパートに移り住んだ。
同時にアタシは、知人からの紹介で松山市内の人妻専門のデリヘル店に入店した。
500万円を目標に設定しておカネをかせいで貯金する…
貯金がたまったら、浜松へ帰ってもう一度0から人生をやり直そう…
アタシは、そう決意してシャニムになって働いた。
そんな中で、年が明けて2012年になった。
アタシは、2月28日までに500万円の貯金ができたら浜松へ帰ることを決意した。
この時、ダンナのことはきれいに忘れた。
2月14日のことでありました。
目標達成まであと一万数千円になった。
この日、アタシは松前町の県道沿いのラブホにいる予約のお客さまの元へ行った。
アタシを指名して下さったお客さまは、甘えん坊さんであった。
アタシは、お客さまが注文したマタニティブラとマタニティショーツのコスチュームを着けたあと、お客さまの受け身になった。
お客さまは、アタシの乳房(むね)に抱きついて泣きながら甘えていた。
「ママ…ママ…」
「よしよし…よしよし…どうしたの?」
「ママ…ママの乳房(むね)に甘えたいよぉ…さみしいよぉ…好きなカノジョがいないよぉ…結婚相手が身近にいないから…生きて行けないよぅ…」
「かわいそうに…よしよし…よしよし…よしよし…」
優しいお母さんになりきったアタシは、お客さまをやさしくなぐさめていた。
この時、アタシは今も行方不明になっているダンナを思い出した。
ダンナは、どうして家庭や職場でもめ事を起こしたのか…
ダンナが婚期を逃した原因は、なにか…
少しずつだが、なんとなく理由がわかってきた…
しかし、今のアタシはダンナを助けることはできない…
そうこうして行くうちに、目標の金額が近づいたので、浜松へ帰る準備を始めることにした。
2月26日に、アタシは目標の金額を達成したので予定通りに浜松の実家へ帰ることにした。
この時、行方不明になっているダンナとよく似た男性が2月25日頃に久万高原町でダンナとよく似た男性が目撃されたと言うニュースを聞いた。
アタシは、久万高原町へダンナを探しに行くことにした。
アタシは、大街道のバスターミナルから始発のJRバスに乗って久万高原へ向かった。
砥部の拾町(じっちょう)交差点の高架橋を越えた時、小雪がちらほらと舞っていた。
窓の風景は、雪景色に変わった。
ダンナは…
久万高原のどこにいるのか…
ダンナは…
どんな想いで40年間生きてきたのか…
ダンナの婚期が遅れた原因は…
アタシは、そんなことばかりを考えていた。
バスは、久万高原町の中心地にあるバスターミナルに着いた。
しかし、アタシはそのまま終点の落出(旧柳谷村)の交差点のバス停まで乗った。
アタシは、落出のバス停でバスを降りた後、国道440号線の四国カルスト方面へ向かって歩いた。
この時、雪は非常に激しく降っていた。
アタシは、四国カルスト方面へ向かって歩きながらいろんなことを考えていた。
それから二時間後…
非常に激しく降った雪が弱まったと同時に、視界がはっきりと見えた。
たどり着いた場所は、四国カルストの天狗高原であった。
この時、行方不明になっていたダンナが見つかった。
ダンナは、ものすごく弱々しい表情を浮かべていた。
ダンナは、弱々しい声で『もう少し…もう少しだけ…かあさんのふくよかな乳房に甘えている時間が欲しかった…かあさんに甘える時間がもう少しだけ長かったら…』と言うた。
アタシがたけひこさんのおかあさんになろう…
そう思ったアタシは、デリヘル店のコスプレで使っていたヘザーグレーのマタニティブラとマタニティショーツの姿になった。
そして、たけひこさんを優しく抱きしめた。
おかあさんのふくよかな乳房にもう少しだけ甘えていたい時期がほしかったのね…
結婚相手に出会う機会を逃したことがつらかったのね…
アタシは、やせ細ったたけひこさんを抱きしめた。
たけひこさんは、アタシの乳房(むね)に抱かれながら静かに息を引き取った。
アタシは、安らかな表情で息を引き取ったダンナを抱きしめながら『げんこつ山のたぬきさん』の童謡を繰り返して唄っていた。
【おわり】
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