幼少期 8

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幼少期 8

 悦子は、娘の私が甘えようとしたり、泣いてなにかを訴えようとしたり、お願いをしようとしたりすると、露骨に不快な表情をし、棘のある口調で私を突っぱねる。そういう母親だった。  幼い頃に悦子に言われて、受けたショックが大きすぎて、いまだにずっと覚えているセリフがある。  高木家は田舎にあったため、外には虫がたくさんいた。  私は、虫が大嫌いだった。特に、羽に目の模様がついている蝶は、恐ろしくて仕方なかった。  ある日、悦子について歩いていると、私は、茂みにその蝶がいるのを見付けた。  私は、それ以上歩を進めることができなかった。立ち止まり、恐怖のあまり泣いてしまった。  前方にいた悦子は、そんな私を振り返り、理由を聞くと、 「なんでも泣けばいいと思ったら、大間違いだからね!」 と、吐き捨てるように叫んだ。
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