10人が本棚に入れています
本棚に追加
プレプロローグ 4
「亜紀子さんの時は、どうだったんですか?」
「亜紀ちゃんが、非人界の従業員になったきっかけは? てこと?」
「はい」
俺は、無意識に身を乗り出していた。俺も、その話は聞いたことがなかったし、興味があった。
「うーんとね・・・」
朋佳さんは、少し考えをまとめるような間を置いてから、口を開いた。
「亜紀ちゃんはね、機能不全の家で生まれ、育った人なの」
俺と彩夏は、異口同音に聞き返した。
「機能不全?」
「まあ、虐待されて育ったってこと。それも、傍目にはもちろん、本人自身も気づきにくいやり方でね。そういう人って、子ども時代ももちろん辛いけど、大人になってからはもっと大変な思いをさせられるのよ。普通の親元に生まれていればしなくていい苦労を、人の何十倍も背負わされて・・・見てて、かわいそうだった」
そう言って朋佳さんは、沈んだ表情でうつむいた。普段、朗らかこのうえない人なので、その様子はいっそう痛々しく見えた。
最初のコメントを投稿しよう!