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プレプロローグ 5
「亜紀ちゃんは、本当に惨めで孤独で辛いだけの人生でね・・・。スカウトする前、よく言ってたんだよね。『死んでる人たちはいいな。死ねば楽になれるんだから、死んでる人たちが羨ましい』って。そんな亜紀ちゃんを見て、助けたいって思ったの。生きてる間、少しでも穏やかな人生を送ってほしくて。だから、スカウトした」
俺は、肯いた。俺自身、両親から常にいびられて育ったから、具体的な話は聞かなくとも、亜紀子さんの身の上は、なんとなく想像できる気がした。
「あと、もう一つ、理由があるわ」
「理由? なんですか?」
彩夏の問いに、朋佳さんは、片方の口角だけを奇妙に歪めて答えた。
「亜紀ちゃんは、非人のエサを選択するのに、とても有益な人材だったということ。亜紀ちゃんの周囲には、彼女に悪意を向けたり、食い物として利用したり、そんなヤツラばかりがうようよしてたから。亜紀ちゃんは、非人界の従業員としては、うってつけの即戦力だったのよ」
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