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「俺は奥の部屋から確認するから、バス・トイレを見といて」
「了解、ぱっと見、大丈夫そうじゃないですか?」
2K(6畳2つ)バス・トイレの室内、目立つのは、箪笥、机、本棚、冷蔵庫ってところで、限りなく普通。床に物が散乱しているでもないし。持たない系の人の家だ。奥の部屋、布団が畳の上に出っぱなしだから、押入れはいっぱいなのか? なんて、一瞥して見当をつけてみた。
「まぁ、これなら普通に終わるだろ」
内田さんも一安心かな。いや、マジで、終わらないと帰れないからね、この仕事。トラックに積みきれない時とか本当に大変、応援よんだり、誰もいないなら、一度、ゴミ処理場に捨てに行って、また戻って積み込んで、明日の朝一で改めて捨てに出向いたり・・。
こうして、油断してトイレのドアを開けてしまった。
いつもならドキドキしながら、「何もありませんよーに」って、祈りながら開けるのに。
室内、普通に綺麗だったから、警戒アンテナが全く作動しなかった。
予期しないことが突然、起こった時に、ちゃんと悲鳴をあげることができる人は凄い。声を発することで、周囲にHELPを求められる、危険を周囲に知らせられる、これは訓練が必要なんじゃないかって、心から思うよ。
「ひっ!?」
だって、自分の場合は、声にできなかった。
トイレのドアを開けて、目の前に現れたのは、ボサボサの黒髪の子供。洋式の便器に座って自分を見上げていた。
今、思うと、その瞬間に時間が止まったような感覚。
声を発することもできず、『腰をぬかす』って言うのを地でやった。
自分を見上げる目と、どのくらい対峙していたのかな。
ドアを閉め直すこともできなかった。
眼で確認したモノを、脳がちゃんと処理するまでに、予想外の出来事が起こると、バグっちゃうってことなんだろうな。
フリーズ。シャットダウンから再起動。
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