12:恥ずかしくて死ねる

1/1
前へ
/38ページ
次へ

12:恥ずかしくて死ねる

 それが人の舌だということに、気付くのにそう時間はかからなかった。   「っあ、そん、な……やぁ……っ!」  愕然とする。  いくら仕事場でシャワー浴びてきたからって、そんなところ、身体のなかで一番汚ない場所なのに。    とてつもない羞恥に、生理的な涙が滲む。   「やめ……っそこ、きたな、からぁ……!」  ぴちゃぴちゃと聞きたくもない水音が、行為の生々しさを助長する。    皺をひとつひとつ伸ばすように舌先で舐められて、じゅるじゅると浅ましい音を立てながら後孔を吸われる。    ぞくぞくと背筋に電流が走って、それが気持ちいいと認識できてしまっている自分を疑った。    後ろめたさと羞恥心に、気が狂いそうだった。   「っひ、ぃやぁ……! あ、あっ、やだ……ッやだぁ、」 「すごいですね……、腰揺らして、そんなに気持ちいいんですか」  快楽に溺れるまま、俺は無意識に腰を揺らしていたらしく、指摘されて初めて気づく。   だけど、ゆらゆら揺れる腰つきと、尻たぶごとひくひく収縮する動きは止まらない。    せめて尻の筋肉がぴくぴく痙攣するのを止めたいのに、過剰に反応してしまう身体は、俺にはどうすることも出来なくて。   「いやらしいですね」  笑うような声に泣きたくなる。  もう、やだ。  穴に吐息が当たるだけで腰が跳ねて、俺は枕をぎゅうっと握りしめた。   恥ずかしくて死ねる。     「も、汚ない……っからぁ、やめ、て…っん、ぅ、あ」  ぶるぶる震えながら懇願する俺の声は、届かない。 「汚なくないですよ、石鹸の味がしますし」 「ぃ、やだぁ……っ!」  その台詞がもう、俺にとって拷問のようだった。  うねうねと蠢く舌が、きゅうっと締まった入り口を無理矢理こじ開けて、入ってくる。    硬くて細いものも一緒にナカへ侵入してきて、冷たくないそれは指なのだと理解する。   「っあ、ぁ……ッだめ、だめだ、ぁう……んっ」 「嘘つきですね。ここをこんなにしておいて」  ちゅぽ、と舌が抜かれる。    優しい印象を受ける声色は変わらないのに。  正反対な卑猥な言葉に、身体が更に熱くなる。    勃ちっぱなしの自身は重力に逆らって上を向き、俺の気持ちとは裏腹に透明な蜜を垂れ流して悦ぶ。    ぬるぬるのそこを扱かれて、四つん這いの背筋が思わずピンと伸びあがった。   「や、あっ、ぁあ……!」  後ろもぐちゅぐちゅに掻き回されて、変になる。 ……いや、もうすでに、変になっていた。  今まで生きてきて、ここまで非現実的な出来事も、男に良いようにされるのも。  恥ずかしいのに、こんなに気持ちいいことも、初めてで。    だから俺は。  おかしくなっていたんだ。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

472人が本棚に入れています
本棚に追加