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12:恥ずかしくて死ねる
それが人の舌だということに、気付くのにそう時間はかからなかった。
「っあ、そん、な……やぁ……っ!」
愕然とする。
いくら仕事場でシャワー浴びてきたからって、そんなところ、身体のなかで一番汚ない場所なのに。
とてつもない羞恥に、生理的な涙が滲む。
「やめ……っそこ、きたな、からぁ……!」
ぴちゃぴちゃと聞きたくもない水音が、行為の生々しさを助長する。
皺をひとつひとつ伸ばすように舌先で舐められて、じゅるじゅると浅ましい音を立てながら後孔を吸われる。
ぞくぞくと背筋に電流が走って、それが気持ちいいと認識できてしまっている自分を疑った。
後ろめたさと羞恥心に、気が狂いそうだった。
「っひ、ぃやぁ……! あ、あっ、やだ……ッやだぁ、」
「すごいですね……、腰揺らして、そんなに気持ちいいんですか」
快楽に溺れるまま、俺は無意識に腰を揺らしていたらしく、指摘されて初めて気づく。
だけど、ゆらゆら揺れる腰つきと、尻たぶごとひくひく収縮する動きは止まらない。
せめて尻の筋肉がぴくぴく痙攣するのを止めたいのに、過剰に反応してしまう身体は、俺にはどうすることも出来なくて。
「いやらしいですね」
笑うような声に泣きたくなる。
もう、やだ。
穴に吐息が当たるだけで腰が跳ねて、俺は枕をぎゅうっと握りしめた。
恥ずかしくて死ねる。
「も、汚ない……っからぁ、やめ、て…っん、ぅ、あ」
ぶるぶる震えながら懇願する俺の声は、届かない。
「汚なくないですよ、石鹸の味がしますし」
「ぃ、やだぁ……っ!」
その台詞がもう、俺にとって拷問のようだった。
うねうねと蠢く舌が、きゅうっと締まった入り口を無理矢理こじ開けて、入ってくる。
硬くて細いものも一緒にナカへ侵入してきて、冷たくないそれは指なのだと理解する。
「っあ、ぁ……ッだめ、だめだ、ぁう……んっ」
「嘘つきですね。ここをこんなにしておいて」
ちゅぽ、と舌が抜かれる。
優しい印象を受ける声色は変わらないのに。
正反対な卑猥な言葉に、身体が更に熱くなる。
勃ちっぱなしの自身は重力に逆らって上を向き、俺の気持ちとは裏腹に透明な蜜を垂れ流して悦ぶ。
ぬるぬるのそこを扱かれて、四つん這いの背筋が思わずピンと伸びあがった。
「や、あっ、ぁあ……!」
後ろもぐちゅぐちゅに掻き回されて、変になる。
……いや、もうすでに、変になっていた。
今まで生きてきて、ここまで非現実的な出来事も、男に良いようにされるのも。
恥ずかしいのに、こんなに気持ちいいことも、初めてで。
だから俺は。
おかしくなっていたんだ。
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