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19:錯乱
まだ余韻が抜けてなくて、ぴくぴくと小さく痙攣する身体。
顔を横に向けたまま、俺は視線だけを祐介に移した。
「……すまん、汚しちまった…」
「いえ、たくさん出ましたね。すごい量……」
言いながら、やつはどこか恍惚とした表情で頬についた白濁を指で掬って、そして、何を思ったか、青臭いそれを舐めた。
「っな、ばかっ! んな汚ねぇもん舐めんなよ……!」
「汚なくないですよ、いやらしい味がします」
「……っ!」
いやらしいのは、明らかにお前のほうだろ。
赤い舌が、指についた白をぺろりと舐めとる。
卑猥な光景になんだか物凄く恥ずかしくなって、俺は真っ赤な顔をバッと両手のひらで覆って隠した。
ほんとに今更だとは思う。
だけど、なんでこんなに恥ずかしいんだろう。
顔から火が出そうなくらい、熱い。
「可愛かったですよ、達也さん」
きっと今、こいつはムカつくほど綺麗な顔で、ちょっと意地悪そうに笑ってるに違いない。
そんなやつを、俺は直視出来るはずもない。
……だって、なんか。
俺、流れでとんでもないことしたし、醜態もたくさん見られた……。
身体はまだ火照っていて、後ろになくなった存在が大きすぎたせいか、後孔がちゃんと締まらない。
まだぽっかりと穴があいているような気がする。
それが余計に、情事の証拠をリアルに伝えてくる。
「どうしたんです、急に。体調が優れませんか」
突然顔を隠して何も喋らなくなった俺に、兄ちゃんの心配そうな声が聞こえてくる。
もう、見るな。
改めて自分がした、事の重大さと羞恥心で顔を上げられない。
俺は生娘か。
いやまあ、そうだったんだろうけどさ……。
「からだは、大丈夫だから……」
ボソボソと、それだけ呟くので精一杯だ。
こんな、途中まで名前も知らなかったようなやつと、しかも最後までしてしまうなんて。
男とするのも初めてのくせに、あんなに喘いで、あんなに感じるとか。
ほんとに俺、浅はかすぎる。
……ていうか、ここって。
「っ、お、俺……!」
「? どうされました?」
「人、まだ居たのに、俺、でかい声、だした……ッ」
……どうしよう、どうしよう……っ!
行為に溺れて忘れていた。
ここは、マッサージ店で、他に、人が居たのに……っ!
絶対……、バレた。
聞こえてた、ぐちゅぐちゅって音も、俺の、声……も。
あんな可愛い女の人に、俺の、よがる変な声、聞こえて……!
「っひ、ぅ……あぁ゙」
激しい性行のあとでの事実に、俺は気が動転していた。
まるで情緒不安定になったみたいに、ショックやら罪悪感やらで、今さらぼろぼろと涙が溢れる。
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