みんな真崎を愛してる

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 ネイビーブルーの旗がたなびく競技場は、すでに大勢の来場者で賑わっていた。ほとんどは地元・エルカミナンテ遠出(とおで)のサポーターで、その青い波間を縫うように大嵩(おおたか)FCのオレンジ色がのぞく。カラフルな人波にイチカは目を瞬かせた。  競技場の周囲には案内所や会員用ブースの他、キッチンカーや物販のテントなどがずらりと並んでいる。だがサッカー観戦初心者のイチカは、とりあえず競技場に入ることにした。エアアーチをくぐって検温コーナーをパスし、待っていたスタッフにQRチケットを提示する。 「こちらどうぞー」と差し出された試合のプログラムやチラシを抱え持ち、最寄りのゲートから場内に入る。席の良し悪しがわからないので、買った席は安くて左右の空いているバックエンドの最後方だ。階段を上って目的の席に腰を下ろすと、イチカは辺りを見回した。 「おおー」  思わず声が出る。遠すぎたり、見えづらいのではという考えは杞憂だった。眼下にゆうゆうと広がる芝生をながめているうち、イチカの心はドキドキと高鳴りはじめた。  とうとう、真崎(まさき)選手に会える。  会えるのだ……!
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