こういうことだったのかな。-サイコと魔性の初デート-

11/11
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
観覧車を降りて遊園地を出、賢二と美香は駅へと向かう。 駅に向かう客は、思いの外疎らだ。賢二は観覧車でのことを思い出していた。 自分がリードできなかった悔しさもあるが、それ以上に 美香の大胆さに驚かされた。 美香があんな魔性の女だとは思わなかった…――― 「どうしたの?賢二」 また黙り込んでいる賢二に美香が声をかけた。 はっとして美香を見ると、賢二は何でもないよと言って笑った。 『美香とキス、できて嬉しかったけど、でも…』 俺、セカンドなんだよな…… 「セカンド?二番目?何が?」 「えっ!?」 美香に訊かれ、賢二はバッ!と手で口を押さえた。 心の中で呟いたつもりの言葉が、無意識に声となって出てしまったのだ。 「二番目……あ。私、二葉君とはキスしてないわよ」 「えっ?」 美香の言葉に賢二が驚く。 「手前に二葉君がいたから見えなかったかもしれないけど、 あと少しで触れるってところで賢二が来たの」 「そ…そう、なんだ」 ファーストキス、だった… 二人の唇が触れていなかったことがわかり、賢二は嬉しさで 緩みそうになった口元を手で隠した。 「本当にさっきからどうしたの?」 「いや、本当に何でもないよ。…今日一日いろいろあったけど…楽しかったね」 「うん!大学行くまでにまた一回は遊びに行きましょう!」 「うん」 『惚れた女に翻弄されるってこういうことだったのかな…』 そんなことを思いながら、賢二が小さく苦笑いする。 美香が賢二の腕を取った。 「やっぱり変だわ、賢二」 「本当に何でもないって」 変よ、何でもない、そんなやりとりすら楽しみながら、賢二と美香は 明るく照らされた駅の中に入っていった。                                    ー終わりー ………………………………………………………………………………………………………… お話を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。 「二葉君とはキスしてないわよ」のことにつきましては、 『こういうことだったのかな。2』の24~30ページ辺りに 書いています。宜しければ(^^)
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!