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「ん……」
もう朝……?
「おはよう、柚衣」
「ん……おはよう」
結婚記念日の前の日、目覚めると翼は、出張に出かけるための荷造りをしていた。
「ごめん。起こしちゃったか?」
「ううん……平気」
翼は今日から二泊三日で出張に行くんだ。私は大切な結婚記念日を、夫と過ごすことが出来ない。
「翼、もう行くの?」
「ああ、七時半の電車に乗るから」
「そっか」
明日は結婚記念日だというのに、夫と一緒に過ごせないなんて……。
「柚衣」
「ん?」
「今日も愛してるよ」
翼は寝ている私の頬に、そっとキスをする。
「翼……ありがと」
「柚衣、向こうに着いたら電話するな」
「うん」
翼は私のことをすごく愛してくれる。すごく大切にしてくれる。
本当に本当に、そう思ってる。
「柚衣、ハグしていい?」
「うん、もちろん」
翼はこうやって私に、たくさんの愛をくれる。
「じゃあ行ってくるよ」
「行ってらっしゃい。 気を付けてね」
「ああ」
スーツをビシッと着こなし、スーツケースを片手に夫は家を出る。
私は夫に手を振り、夫を見送った。
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