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「……許してもらおうなんて思ってない。でも私……柚衣が羨ましかったの」
「羨ましかった……?」
繭子が言った、私が羨ましかったという言葉は、私にとっては嬉しくもない言葉であった。
「柚衣は翼と付き合い始めてから、本当に幸せそうだったよね。……私だって翼のこと、その頃から好きだったのに、ずっと」
「……え?」
「ううん……。本当は私の方が先に翼のことを好きになったんだよ」
繭子の方が……先に好きになった?翼を……?
「なのに翼が好きになったのは、案の定柚衣だった。……私は翼のことを好きで仕方なくて、だから柚衣から翼を奪うつもりだった。それで翼に近付いた、奪うつもりで」
その時私は、繭子の言葉は心からの本心だと思った。
「そっか……。繭子は私のこと妬んでたんだね」
「そうよ! 私はずっとアンタが憎かった!だからアンタと翼が結婚するって知った時、心底ムカついた!」
繭子の本音は、私には辛いものだった。
「柚衣と翼が結婚してしばらくしてから、翼とバッタリ再会したの。それでその日、一緒にお酒を飲みに行ったの。……それで酔ってる翼を私がホテルまで連れていった。そこでわざと翼と関係を持ったの。そうすれば翼は、私の言うことを聞くと思ったから」
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