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本社でも通用すると言われたように、彼は二十代で支社の部長職に就いた。
だが、北海道支社で部長よりも格上の役職は、工場長と支社長しかないから、しばらくは部長のままだろう。
あまり気にしていなかった。出世欲があるなら、そもそも限定申請をしないからだ。
そんな彼が一生の相手に選んだのは、東京出身の女性。
彼女の赴任当初は、転勤の原因となった男の嘘に惑わされて最低の言動を取ったが、誤解と知ってからきちんと見た美里は、宏夢の好みの性格だった。
穏やかで、傍にいるだけでリラックスできる……
美里と交際して婚約できたのは本当に幸せだが、彼女を北海道にまで追いだした男をそのまま見逃したくない。
さすがに、役員の娘という、男の妻に教えるのがマズい程度は宏夢にも理解できる。
おそらく、あの男の妻は、自分の夫が己のことしか考えない最低な人間ということを知らないはずだ。
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