夫婦での東京行きは、リベンジの仕上げ

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 「別に問題ないけど、何かあった?  今まで東京に行きたいって言ったことないよね」  北海道に来てから、美里が東京に行ったのは三回。実家への帰省だった。  今は彼女の母親も北海道在住で、父親もこちらの寺の納骨堂にいるので、遊び以外で行く必要がなくなった。  美里は完全に東京への未練がないらしく、行きたいと言ったことは一度もない。  「うん、今まではね。  行きたいな、って思ったことはあるんだ。でも、宏夢と同じ理由で行きたくなかったの」  「ああ……同期の同僚になるからな」  本社に行かなければ元カレに会う心配はないが、絶対はない。  「でも、もう本社にいないから、行っても会わないじゃない。  一美たちの子供に会いたいし、私たちの子供たちとも会わせたいなってね。それに、久しぶりに社食で食べたいしさ」  気持ちは分かる宏夢だ。  美里は転勤するまでは、ほとんど毎日社員食堂でのランチだったというから、懐かしい味をまた食べたいだろう。
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