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「仕事との両立は大変ですからね。
それでも、まだ三十代なら大丈夫ですよ」
今の時代、仕事に専念していたら、出産が遅くなるのは避けられない。
「そうですよね~三十代はまだまだですよね~*」
口調に微妙な苛立ちを感じたが、下手に確認すると問題になりそうなので、宏夢は慎重に彼女の言葉に返した。
「社会が女性の進出に寛容なら、もっと早く出産できますし、二人以上も可能なんでしょうね……
今も、妊娠出産でキャリアが切れる女性はまだまだ多いですから、難しいですよね」
個別の問題を女性全体の悩みにすり替えた。微妙な話題は回避するに限る。
一美も輝明も、宏夢の会話術に気づいただろうが指摘することなく、その後は、会議が始まる寸前まで、お互いの子供の話で盛り上がっていた……
*三谷一美の従弟が主人公の作品「翼、大きく羽ばたかせて」の246ページから251ページに掛けて、大場夫妻が出てきます。
親戚の、育児に関する発言で一美は黙っているわけはなくて……という描写がございます。
その場面と繋がってますので、宏夢には苛立ちの理由が分からないわけです。
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