夫婦での東京行きは、リベンジの仕上げ

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 「工場長が資料を忘れたから、昼からの開始時間までに持ってきてくれって言ってきたんだ。  こんなどうでもいい仕事面倒だって思ったけど、受けて良かった。  会いたかった」  彼が美里しか見ていないことがよく分かる。  美里の傍には、不倫相手だった恵理や、不仲な同期の輝明や一美がいるのに、まったく気にすることなく話しかけているからだ。  課長待遇で転勤と聞いたが、新人でもできるような業務を指示されるということは、関東工場でも持て余しているのだろう。  哀れな姿だ。  だが、役員の娘に乗り換えて、最低な態度で恋人を捨てたということは、耀士(ようじ)の記憶から完全に消えているらしい。  そして、今も美里に執着していることも明瞭(めいりょう)だ。  頭の半分は冷静に事態を把握しているが、残りの半分は殴りたい衝動を(おさ)えられない宏夢だった。  「……同期の大竹(おおたけ)さんですか」  横から冷たい声が聞こえて、宏夢は少し落ちつきを取り戻した。
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