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美里は怒りを向けることもなく、淡々とした口調で確認していた。
その冷淡さに、耀士はショックを受けているようだ。
「そんな、他人行儀な態度取らなくてもいいだろ」
思わない返答に、耀士の声に苛立ちが混じった。その声を聞いても美里の冷淡な態度は変わらない。
「大竹さんとは、同期というだけの他人ですけど。
確か……つきまとってくる女と働くのは大変で困ってる、でしたよね。それなら、大竹さんにとって喜ばしい態度じゃないですか」
耀士の結婚式を欠席するからと、輝明たちが北海道に来た時、宏夢も加わって、四人で食事を楽しんだ。
その場で、美里が意外に勝気な発言をすることがあると知った。
今回も同じらしい。耀士に対する視線は他人以下に対するものだ。
嘘をついていたと、他の社員の前で明かされた耀士は、今度は顔を赤くして美里を睨んだ。
「そんな昔のこと、しつこく言うなよ。
仕方ないだろ。あの時は、いろいろ大変だったんだから。取締役の目もあったし」
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