夫婦での東京行きは、リベンジの仕上げ

16/20
前へ
/60ページ
次へ
 美里は怒りを向けることもなく、淡々とした口調で確認していた。  その冷淡さに、耀士(ようじ)はショックを受けているようだ。  「そんな、他人行儀な態度取らなくてもいいだろ」  思わない返答に、耀士の声に苛立(いらだ)ちが混じった。その声を聞いても美里の冷淡な態度は変わらない。  「大竹さんとは、同期というだけの他人ですけど。  確か……つきまとってくる女と働くのは大変で困ってる、でしたよね。それなら、大竹さんにとって喜ばしい態度じゃないですか」  耀士の結婚式を欠席するからと、輝明たちが北海道に来た時、宏夢も加わって、四人で食事を楽しんだ。  その場で、美里が意外に勝気な発言をすることがあると知った。  今回も同じらしい。耀士に対する視線は他人以下に対するものだ。  嘘をついていたと、他の社員の前で明かされた耀士は、今度は顔を赤くして美里を(にら)んだ。  「そんな昔のこと、しつこく言うなよ。  仕方ないだろ。あの時は、いろいろ大変だったんだから。取締役の目もあったし」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

285人が本棚に入れています
本棚に追加