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(そんな言いわけ、誰も聞いてない。しかも、謝罪でなくて自己弁護とは……)
美里も宏夢と同じことを思ったようで、冷たい態度は変わらなかった。
「しつこく……初めて言いましたけど。
私と大竹さんは十年以上会ってないんですよ。いつ、言う機会があったんですか?変なことを仰らないでください」
宏夢は心の中で賛同した。しつこく思い出させたのは、美里ではなくて、宏夢と輝明たち。
完全に濡れ衣の美里の表情に呆れの色が加わった。
「それに、結婚を決めたのはご自分ですから、誰かのせいにするのは恥ずかしいですよね」
社員食堂は静まり返っている。
知らない社員も多くなったが、美里と耀士の交際を憶えている人間もまだ少なくないはず。
その社員たちは、破局の事情も知っているから、耀士の厚かましさと攻撃的な美里に、興味津々という雰囲気だ。
間違いなく、本社の人間たちにしばらく楽しめる話題を提供したことになっただろう……
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