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統基は立ち上がると、充里の席を過ぎ、荘厳なオーラで檻を作る女子生徒の机に手をついた。
「君、すっげえ姿勢いいね」
……無視かい。
統基は極めて親しげに声をかけたつもりだったのだが、彼女は無言で姿勢を崩すこともない。
ただ、まっすぐにキリッと前を見ている。
「耳、聞こえてる?」
もしかして、と思った統基が尋ねると、彼女は堂々とした空気をまといながら、首を縦に振った。
……コイツ、とんでもなく顔がいいからって、高嶺の花気取りか。
俺もさっき、これぞ高嶺の花だと思ったけども。
この私に気安く話しかけてんじゃないわよ、ってか。
一番嫌いなタイプだわ。
顔なら俺だっていいが、俺はこの通りフレンドリーだっつうのに。
「統基!」
呼ばれて振り返ると、充里が頭頂部の大きなお団子がまず目につく女子生徒の肩を抱いている。
統基は驚いて声も出なかった。
「俺、この子と付き合う! めっちゃかわいい!」
「は? 付き合うってお前」
「付き合ってって言ったらさー、いいよ~って言ってくれて」
「いや、付き合ってってお前」
充里は統基の声など耳に入ってない様子で、ニコニコと笑っている女子生徒を見ている。
お団子頭の女子は、頭も丸ければ顔も丸く、大きな胸も丸い。
身長165センチの統基よりも少し背が低いくらい、女子にしては高身長で、全体的に丸くぽっちゃりしている。
「まじか。名前は?」
「曽羽愛良だよお」
おっとりと答える声は統基には甘ったるく、フワフワした綿菓子を思わせる。
「曽羽ちゃん、かわいい~」
「かわいい~じゃねえんだよ」
まったく、この自由人が、と統基が呆れていると担任教師がガラララッとドアを開けて入ってきたので、統基も席に着く。
出席番号1番の統基は、教室最奥、窓際の一番前である。
統基は先生の話も聞かずに、周りの生徒を眺める。
さすがは日本の偏差値ランキング最底辺。
統基もネクタイの締め方が分からずしていないのだが、ほとんどの生徒が好き勝手に制服を着崩している。
でも、中学の時に噂で聞いていた通り、かわいい女子が多い。
誰にだって絶対に良いところがあるんだから、誰でもいい。
俺は彼女が欲しい!
「みんなで遊びに行こうぜー!」
「いいよ! 充里!」
「充里! どこ行くー?」
わらわらとクラスメイトたちが充里の周りに集まる。
マジ半端ねえわ、充里。
入学式当日の放課後だというのに、すでに3月を迎えたかのような馴染みっぷり。
「あれ? 俺の後ろに席あったの? 休み?」
「今気付いたんかい」
充里が15と書かれた紙が貼られた誰もいない机をポンポンと叩く。
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