12人が本棚に入れています
本棚に追加
/265ページ
それからの統基は、ソワソワフワフワして、あっという間に比嘉の門限の時間を迎えてしまった。
「これが末吉か」
「末吉? あ、おみくじ?」
おみくじの結果が引っかかったのなんて、初めてだわ。
統基は不甲斐なく感じて、比嘉の家の前にて自分で自分の髪をわしゃわしゃにしてしまう。
「あ、ねえ、4月がどうしたの?」
「は?」
「途中で遮っちゃったから」
「何を?」
「えっと、太鼓橋から歩いてた時に、入谷の友達がちょっとだけ見えた時」
……ああ、紅葉か。
たしかに、あの時俺、話の途中だった気はするけど……。
何だっけ。
「お前、やっぱ初見だと人見知りひどいよな。全然しゃべんねえの」
統基はつい思い出し笑いをしてしまう。
「だって、話が早くて」
「まあ、中学の時の話とかされても分かんねえもんな」
「楽しそうだなって」
「え?」
「入谷、楽しそうだなって……テンポがいいって言うか……」
なんで、寂しそうなの。
俺の気のせい?
「俺、比嘉のゆっくりしたペース好きだよ。高校入ったばっかの頃の高嶺の花オーラバンバンの早口なんじゃなくて、ナチュラルにトロい感じ」
「……トロい……」
「トロいとこ好き。不器用なとこも」
比嘉が好き。
だけど……今の俺に、言う権利はない。
もしも、比嘉の好きな人が俺だとしても、比嘉はきっと嬉しくない。
比嘉が家に入るのを見届けた統基は、また比嘉を怖がらせそうな鋭い眼差しに変わり、歩きだした。
最初のコメントを投稿しよう!