好きの有権者

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それからの統基は、ソワソワフワフワして、あっという間に比嘉の門限の時間を迎えてしまった。 「これが末吉か」 「末吉? あ、おみくじ?」 おみくじの結果が引っかかったのなんて、初めてだわ。 統基は不甲斐なく感じて、比嘉の家の前にて自分で自分の髪をわしゃわしゃにしてしまう。 「あ、ねえ、4月がどうしたの?」 「は?」 「途中で遮っちゃったから」 「何を?」 「えっと、太鼓橋から歩いてた時に、入谷の友達がちょっとだけ見えた時」 ……ああ、紅葉か。 たしかに、あの時俺、話の途中だった気はするけど……。 何だっけ。 「お前、やっぱ初見だと人見知りひどいよな。全然しゃべんねえの」 統基はつい思い出し笑いをしてしまう。 「だって、話が早くて」 「まあ、中学の時の話とかされても分かんねえもんな」 「楽しそうだなって」 「え?」 「入谷、楽しそうだなって……テンポがいいって言うか……」 なんで、寂しそうなの。 俺の気のせい? 「俺、比嘉のゆっくりしたペース好きだよ。高校入ったばっかの頃の高嶺の花オーラバンバンの早口なんじゃなくて、ナチュラルにトロい感じ」 「……トロい……」 「トロいとこ好き。不器用なとこも」 比嘉が好き。 だけど……今の俺に、言う権利はない。 もしも、比嘉の好きな人が俺だとしても、比嘉はきっと嬉しくない。 比嘉が家に入るのを見届けた統基は、また比嘉を怖がらせそうな鋭い眼差しに変わり、歩きだした。
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