相思相愛

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「私のために、もう会わないって言ったの?」 「うん。それだけじゃねえけど」 比嘉に隠し事があるのも嫌だ。 これまでのことは言わないけど、ちゃんと潔白の身になって告白したい。 「私はいいよ。気にしない。なんなら、好きな子と上手くいっても統基に会いたい」 「は?」 ニッコリ笑った天音に、統基はポカンとしてしまう。 「何それ。ねえ、確認なんだけどさ、天音さん、俺のこと好きなわけじゃないよね?」 「好きだよ」 まじか……。 大人に好きになられるなんて、考えたことなかった。 「なーんちゃって。ドキッとした?」 「嘘かよ」 まんまと動揺させられたと分かって、統基は思いっきり天音を睨む。 「もし、本気で言ってたら私に心変わりする?」 「しねえよ。もっと早くに会わないようにするべきだったって、後悔」 「なんでよ」 「好きなら俺、天音さんに何もできないもん」 「どうして?」 「なんか今日めっちゃ聞いてくんね」 「いいから」 統基はすっかりめんどくさくなっている。 「俺は好きじゃないもん」 「お互いに好きじゃないならするのに、私が好きならできないの?」 「おん」 「どうして?」 「えー……なんだろ。気持ちが違うから、かな」 お互いに何の気もないなら、楽しめる。 だけど、根本の思いが違うなら、ダメな気がする。 「まー、好きじゃないなら良かった。じゃあ、またひろしで!」 スッキリ晴れ晴れとした笑顔で、統基は立ち上がって伸びをした。 「待って」 統基の腰に天音が抱きつく。 「何」 「ひとりで勝手に決めないで」 「ワガママだとは思うけど、もう決めた」 「私、今は統基しかいないの。寂しい」 「前は何人いたんじゃい」 まったく、このおねーさんは清楚に見えて奔放なんだから。 「家に帰っても誰もいないし、ひとりぼっちで……統基と会う時間って、小さい頃に家族で過ごしたあったかい時間を感じてたの」 「……天音さん……」 か細い声に、天音の腕を振りほどこうとしていた統基の手が止まった。 「待て。家族多いって言ってなかった?」 「きょうだいは多いんだけど、みんな結婚してそれぞれの家族があるから」 「天音さん、長女じゃなかったっけ」 「ううん、末っ子。そんなことも覚えてくれてないくらい、私の話に興味なかったんだ……」 「興味はないけど」 つい口が滑って、統基は慌てた。
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