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「うわあ……腕、持つかなあ」
亜紀の諦めたような声が重なって、荷物がさらに重くなったように感じる。
特に鍛えてない私の白い腕が、声にならない悲鳴を上げている。これでも学生時代はダンスやってたし体力には自信あったんだけどな、と過ぎ去った年月を思いながら歩いていると、廊下の向こうから聞き慣れた声が飛んできた。
「手伝うよ、結奈、亜紀ちゃん」
顔を上げると、ショートウルフヘアの爽やかな笑顔と目が合った。
「涼!」
呼びかけるが早いか、涼は軽やかな足取りで近づいてきて、私が持っていた段ボール箱を引き取った。
「ありがと、涼。助かる」
「このくらい何でもないよ」
箱を渡すときネクタイの結び目がよく見えた。控えめな見た目だけどきれいな左右対称の三角形を保っていて、私は思わず頬を緩める。
「亜紀ちゃん、それ下に置いといていいよ。これ運んだら取りに来るから」
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