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「いいんですか?ありがとうございます、朝風さん!」
振り向けば亜紀は段ボール箱を既にカーペットの上に置いて、肩にかかった栗色の巻き髪を指で整えていた。
私、長い髪は似合わないんだよな。左手でベージュに染まったえり足を触りながら思う。
涼はといえば、私たちがひいこら言っていたのがバカみたいに思えるくらい、段ボール箱を持ったままそそくさと廊下の奥へ進んでいて、あの細身でもやっぱり男は腕力があるんだな、と思った。
「素敵ですよね、朝風さん。佐原さんもそう思いません?」
「ま、他の同期の男に比べたらいいほうかな?」
「ええっ、厳しいですね。ネクタイもきっちりしてますし。結び方がおしゃれっていうか」
「そう?あれくらい普通じゃない?」
「普通じゃないです、カッコイイです。結び目がまっすぐで、なんかキレイな
三角形になってて。私の同期たち、結び目が妙に斜めで気になるんですよね」
「そうなの?」
この子、あの結び方の名前、知らないんだ。
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