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「ああ、重たい」
資料や試作品の山を詰め込んだ段ボールの角が私の手のひらに食いこんで、思わず呻いてしまった。
「やっぱり台車借りればよかったですね、佐原さん」
私の呻きに、後に続く亜紀が反応する。
窓ガラスにうっすらと映る私たちは、うら若き乙女というより引っ越し屋さんみたいだ。先頭は私だけど、頭一つ高い亜紀の方がリーダーのように見えて、少し悔しい。
「しょうがないよ。どこの誰が借りてるかわかんないし、待ってられない」
倉庫の台車は社内の誰でも使えることになっていて、そのくせ数は少ないから借りられないことも多い。今日みたいに突発の会議があると、総務課に事前に予約しておくこともできない。
「どの会議室でしたっけ?」
「501会議室」
課長の指示を思い出して答えながら、壁に貼られた部屋番号の表示を見て軽く眩暈がしそうだった。
505会議室。
つまり、目的地はこの廊下の一番奥だ。
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